SIerの日立システムズや上下水道製品ベンダーのトミスなどが協業して実証実験を進めているマンホールのIoT化は、事業化に向けたさまざまな課題も浮き彫りになっている。IoTで使うセンサは、小型であればあるほどよい印象を抱きがちだが、例えばテロ対策で使うのであれば、「マンホールの蓋を開けたとき、威嚇になるような大きく、存在感のあるセンサが好ましい」(トミスの瀬戸口忠・環境事業推進室室長)ことがわかってきた。国内ではテロ活動とマンホールは、あまり結びつかないイメージだが、欧州では神経を尖られている領域であることも、新しく気づいた点である。(安藤章司)
マンホールのIoTで活用されるLPWA(低電力・広域)無線ネットワークは、世界規模で普及の兆しをみせている。世界各国・地域でもマンホールにセンサを取り付けて、業務を効率化したり、防犯に役立てたりするニーズが高まっていて、マンホールのIoTに関して「海外顧客からの引き合いが複数きている」(日立システムズの寺本昌由・IoT推進グループ主任技師)ため、LPWAの普及と同期するかのようにニーズが顕在化しつつあるという。
顧客のニーズを顕在化できれば、「どういったマンホールに、どのようなセンサを取り付ければいいのかはっきりする」(日立システムズの上川恭平・IoT推進グループ技師)とみている。少子高齢化が進む国内ではマンホール管理の省力化や災害対策にニーズがあり、欧州はテロ対策、アジアの成長市場は新規のインフラ整備の一環でIoT対応を進めるなど多様なニーズが存在する。このニーズによって、どのようなセンサで、どのようなデータを集めて、どういった分析結果が必要なのかが違ってくる。
寺本主任技師は、「ITベンダーだけ集まっても、実証実験での知見は限られたものになっていた」と指摘。上下水道、仕切弁、消火栓、ガス、電気、通信などマンホールを巡る多様なニーズを分析するには、やはりマンホールに精通したトミスのようなベンダーの知見が欠かせない。一方、IoTで採り入れた膨大なデータを、ビッグデータやAIの手法で分析するノウハウは日立システムズがもっている。異業種の知見をもち寄ることで、事業化に向けて一段と勢いがついたといえそうだ。