多くの中小企業では、IT化が遅れているとされる。理由は、人員と予算にある。情報システム部のような専任組織はもちろん、担当者を置くのも難しい。IT化のための予算も少なく、導入するなら比較的安価なパッケージシステムということになる。一方で、パッケージシステムは汎用性を重視するため、実業務に合うとは限らない。そこでアイティーフィットは、サイボウズのクラウドサービス「kintone」を活用し、低予算でユーザーに最適なシステムを構築することに取り組んでいる。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 アイティーフィット
所在地 東京都千代田区
資本金 300万円
設立 2010年1月
従業員数 8人(業務委託含む)
事業概要 コンサルティング、システム構築
URL:http://www.itfit.co.jp/
コンサルティングをかたちに
「コンサルティングをかたちにする」。アイティーフィットのコンセプトだ。同社は中堅・中小企業をターゲットに、コンサルティングやシステム構築などに取り組んでいる。「当社は正社員が2人で、業務委託を含めると8人の組織。そのうち、私を含む4人がITコーディネータ資格をもっていて、中堅・中小企業向けにコンサルティングを行い、そこから派生するシステムの構築や運用を手がけている」と、小沢広文・代表取締役は事業内容を説明する。
小沢広文・代表取締役(写真右)、高倉 達・取締役
ITコーディネータの資格取得者は、とくに個人事業主の場合、中小企業向けにコンサルティングを行い、システム構築はSIerなどに任せる。アイティーフィットで業務委託をしているITコーディネータ資格取得者も個人事業主だが、同社ではシステム構築を重視している。「コンサルティングまでというのは、ITコーディネータのセオリーではあるが、中小企業にとってはシステム導入のほうが負担となる。そこが分断されるのは好ましくない」と小沢代表取締役。つまり、“コンサルティングをかたちにする”である。
kintoneでシステム構築
大手SIerを経て独立した小沢代表取締役は、「大手では大型案件が中心となり、中小企業の案件には手を出さない。日本の発展には中小企業のIT化が不可欠。ITを活用してもらいたい」と考え、高倉達・取締役と2人でアイティーフィットを2010年に設立した。ただ、設立当初は、中小企業に最適なソリューションがなく、大手SIerに常駐してプロジェクトの一員としてシステム構築をサポートしていた。
「中小企業向けに、コストを抑えつつ、効率的にシステムを構築できる方法を模索していた。クラウドが有力候補だったが、システムを構築するとなると、まだ高価だった」と小沢代表取締役は当時を振り返る。そうしたなかで登場したのが、サイボウズのkintoneだった。
「kintoneの登場した頃はまだ自由度が低かったが、APIや開発環境などはいずれ充実すると信じて、いち早く取り組むことを決めた」と高倉取締役。手軽にシステムを構築できることから、中小企業向けに最適だと考えた。以降、アイティーフィットは、中小企業向けのコンサルティングとシステム構築を事業の中心に変えていった。
基幹システムの構築で差異化
kintoneを取り扱うITベンダーの多くは、営業を支援するSFAやCRM、ワークフローなどのシステムや、関連帳票を手がけている。一方、アイティーフィットは、kintone上に販売管理や生産管理といった基幹システムを構築することに注力してきている。
「中小企業向けであれば、kintoneで十分な基幹システムを構築できる。しかも、打ち合わせの場で画面をつくることができるため、設計書などは不要。使いながら構築できるので、操作マニュアルもいらない。リプレース案件でも、既存システムの仕様書を確認したことはなく、現場でヒアリングしながら、仕様を決めていくことができる」と、小沢代表取締役はkintoneのメリットを語る。仕様書がないと稼働後のメンテナンスが問題となりそうだが、ユーザー側でメンテナンスができるほど扱いやすいため、心配はないという。
すでに多くの案件をこなしてきた小沢代表取締役は、中小企業がIT導入で成功する秘訣を次のように語る。「ポイントは、業務の担当者が自分でシステムを構築するということ。これまでは、自分で構築できないから外部に委託したり、予算の関係でパッケージシステムを導入したりしてきたが、自分で構築しないから使えないシステムになっていた」。ただ、いくらkintoneが扱いやすいといっても、ユーザー企業の現場担当者がいきなり基幹システムを構築するのは難しい。そこでアイティーフィットは、経営とITの立場でサポートし、継続して運用できる体制にして引き渡している。ユーザーが新たなシステムを追加で開発することも可能だ。「大手がやっているのと同様、中小企業でも自社に最適なシステムを構築できるようになった」(小沢代表取締役)のである。