一般社団法人 みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴
松田 利夫(まつだ としお)

1947年10月、東京・八王子市生まれ。72年、慶應義塾大学工学部管理工学科卒業。94年から山梨学院大学経営情報学部助教授に就任し、現在、同学部教授。2000年11月、きっとエイエスピーを設立し、代表取締役社長に就任。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
プログラミング教育が2020年から小学校で必修化される。その背景には、深刻化するIT人材の不足がある。経済産業省が昨年発表した推計によれば、20年に37万人、30年には79万人不足するそうだ。この数年、IT業界団体がIT教育の大切さを訴え、普及活動を展開している。それに水をさす気はないが、大学でプログラミング教育に長年従事してきたものとしては、適性ある教員の不足やすぐれた教材の欠如など、プログラミング教育の現場側が抱える問題のほうに、つい目が向いてしまう。
かつて勤めていた大学では、物理学や経営学を専門とする教員がプログラミングを教えていた。私が大学で最初に受講したプログラミングの担当は、応用数学を専門とする教員だった。日本の大学では、コンピュータを研究の道具として使ってきた経験のある者が、プログラミング教育を担当する傾向が続いてきた。小学校や中学校では、算数や理科の教員がコンピュータ教育を担当する場合が多いようだ。これは、理系教員であればコンピュータをわかっている筈だという思い込みによる。
日本の教育現場では、コンピュータを問題を解くための道具として捉え、問題を解く手順をコンピュータに指示するための記法としてプログラミング言語を教える傾向が根強く、プロセスや技法を教えるという視点が欠如している。そのため、記法としてのプログラミング言語の習得が目的化され、簡単なプログラム例を次から次へと例示し、それをコンピュータに入力し、実行することを繰り返させることにより、プログラムの書き方を習得させるという教育法を採る教員が多い。
この事実は、「英語という言語を学ぶことを目的化してきた」日本の英語教育の問題点を想起させる。英語という言語を学ぶという考え方から、英語で学ぶという考え方に教育の視点を変えることが大切であるのと同じように、プログラミング言語を学ぶことから、プログラミングで学ぶという考え方にプログラミング教育の視点を変える必要がある。すなわち、プログラミングを通じてコンピュータの仕組みやプログラミング言語自体を学ぶという考え方、そして数学や物理学もプログラミングを通じて学ぶという視点が、これからのプログラミング教育に必要なのではなかろうか。に、きっかけが得られず過ごしている人が活躍することは、本人にとっても社会にとってもプラスである。
働き方改革、取り違えると無理せず働こうというメッセージに捉えらえられてしまいがちだが、世の中そんなに甘くはない。社会の掟が、価値観の多様化によって機能しなくなってきている。共通の価値観ではなく、個人の価値観で判断していかないと成り立っていかない社会だ。自分の価値観をもち、働き方や生き方を判断し自ら決めてゆく。それができない限りチャンスを失い乗り遅れる。そうならないように40歳を前に一度自分のキャリアの棚卸しをお勧めする。取り返しがつかなくなる前に……。
一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴

松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。