沖縄県内には、本土の大手ベンダーの下請けというかたちで受託開発を主要ビジネスとしてきたITベンダーが多い。しかし、沖縄県情報産業協会の副会長である佐和田恵英氏が社長を務めるODNソリューション(本社:浦添市)は、プライムベンダーとして県外案件を受注するケースがほとんどだという。圧倒的な強みをもつクレジットシステムの開発・運用、業務ノウハウを武器に、持続的な成長を図る。(取材・文/本多和幸)
基本は県外案件をプライムで
佐和田恵英 社長
ODNソリューションは、もともとオークス(旧沖縄信販)の電算室として発足し、1984年に分離独立した。クレジットシステムを中心に、金融系システムソリューションの提供に特化したビジネスを展開し、首都圏、九州の顧客を中心に、元請け案件を数多く抱えている。ニアショア開発をメインのビジネスとしているSIerが多い沖縄県の情報サービス業界では、異彩を放っているといえよう。佐和田社長は、「安定して、計画通りに成長している」と話す。
しかし、近年の同社を取り巻く環境は大きな変化の連続で、多くの荒波をくぐり抜けてきたのも確かだ。親会社だったオークスが2008年に倒産。現在はOCS(オークス)がその事業を引き継いでいるが、ODNソリューションとの資本関係は解消され、同社は独立会社になった。その後、13年にインテリジェントウェイブが筆頭株主になっている。もともと売り上げの35%ほどはオークスの案件だったが、「外仕事」を拡充しなければならない状況になった。
さらには、数年前に、金融機関から融資を受けた人が利息の過払い金の払い戻し請求をする事例が急増し、「小さな信販会社やクレジットカード発行会社は相当数潰れてしまった」(佐和田社長)という。同社が従来主力商品として展開していたクレジットソリューションのパッケージ製品は、これにより市場が大きく縮小してしまった。さらに、他社が格安のパッケージを市場投入したことで、同社製品の市場シェアはどんどん下がっていった。佐和田社長は、「われわれは古くからクレジットシステムを手がけてきたこともあり、メインフレームのシステムを中心に提案していて、オープン系に乗り遅れてしまった。これがシェアを下げる大きな要因になった」と振り返る。
ストックビジネスを積み上げる
こうして同社のビジネス環境が激しく変化してきたにもかかわらず、現在では経営を安定軌道に乗せられている要因は何なのだろうか。佐和田社長は、次のように説明する。
「40数年、金融系システムソリューションを手がけてきて、お客様の業務ノウハウへの深い理解も含めて蓄積してきた経験があり、強力な差異化ポイントになっている。当社は、クレジット、消費者金融、銀行の債権回収などもやってきて、上流で仕事ができる人材がいる。だから、要件定義、基本設計から詳細設計、開発、運用、保守開発まで一括で請け負うことができる。大手のユーザーは個別の要件がかなり細かくあってパッケージを使わないし、既存システムの細かな回収もたくさんあるので、まさに当社の実力を存分に発揮できる顧客。運用、保守開発まで入れれば、一過性のビジネスではなく、ストックビジネスになるわけで、それがどんどんと積み上がってきている。当社と同じレベルで網羅的な仕事ができるSIerは、全国的にも非常に少ないと自負している」。
ただし、昨今はFinTechの流れもあり、金融機関の基幹系システムと、顧客接点となるフロントアプリケーションの連携ソリューションなどのニーズも出てきている。佐和田社長は、「そうした破壊的なトレンドにも対応していかなければならない」として、親会社であるインテリジェントウェイブとも連携して、FinTechソリューションの開発などにも取り組んでいきたい考えだ。