『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。
日本独自のものを“ガラパゴス化”と呼び、海外との違いを列挙して絶滅するぞと警鐘を鳴らす。安易な手法だが、ガラケーと呼ばれる日本独自の携帯電話が壊滅状態に追い込まれたことで、ガラパゴス化は市民権を得た。
グローバル化と情報化社会の進展により、海外と日本との比較がしやすくなった。訪日観光客が増えたことも、日本の異質な部分を発見しやすくなり、ガラパゴス化は「日本の××は、ここがヘンだ」と説明のときに便利なワードとして使われている。
日本のサービス業は、G7のなかで生産性が最低だという。おもてなしや高品質を求める風土が原因ともいわれているが、よい部分を失わないのであれば、生産性は高いほうがいい。人口減少社会を考慮しても、待ったなしの状態である。国は、IT活用による働き方改革を生産性の向上の切り札として推奨している。おもてなしや高品質を維持しながら生産性を上げることになれば、前向きな意味のガラパゴス化を実現できそうだ。
日本のSIerも、米国と比較して特殊な存在だとして、ガラパゴス化の指摘がある。それゆえ、いずれは滅ぶとの主張もあるが、環境に適合して進化してきたのがガラパゴスの生物。日本のSIerは、ダウンサイジングの波を乗り越え、クラウド化の波にも適合してきている。米国と違うとしても、中国やインドとは似ている。欧州は、日米の中間のイメージ。比率の違いだけで、SIerはどの国でも存在する。
グローバルを意識しているはずの国策も、何かとガラパゴス化しがちだ。例えば、経済産業省はIoTが普及段階に入ったとして、2月に「『IoTファースト』の実現に向けて」を発表した。そこで掲げたのは「『デジタルファースト』から『IoTファースト』へ」である。IoTやAIなどの新しい分野で実現する世界をデジタルと表現するのが一般的であることから、IoTファーストにはかなりのガラパゴス感がある。××ファーストが政治の世界で流行ってることが、後押しとなればいいのだが。
ちなみに、ガラパゴス化というワードは、ジャパンオリジナルのガラパゴスワードである。他国では使われていないが、新保守主義の台頭がきっかけとなり、グローバル共通用語になるのではと期待している。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。