事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにて、ネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て、11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、株式会社ジャパンネクストジェネレーションCEO、事業構想大学院大学特任教授、Psychic VR Lab エバンジェリスト、地方創生音楽プロジェクト「one+nation」のFounderなどを務める。
今から30年ほど前、私が中学生だった頃は、レコードを買うということ自体にワクワクしたし、レコードを聴く時間そのものが十分時間を支配する価値をもっていた。無料動画配信サイトで音質にこだわらなければ無料で聴ける時代になり、音楽は定額サービスで聴き流す消費財となった。つまり音楽を楽しむことだけで時間を支配する時代は終わったのだ。ファッションも同じだ。ファストファッションの品質はここ10年で飛躍的にアップした。『デザインはシンプルでオーソドックス、他とあわせやすくダサくみえないことが基準で、素材の質は高いもの』が登場した。音楽が時間を占有する価値をもっていた時代には、ファッションとはプロを真似るものだった。音楽もファッションもユーザーは受動的であり、ストーリーを受け取ることで安心していた。
しかし、最近はそれも大きく変わってきている、消費財として捨てられ、若者が没個性になったという声も聞くが、私は逆に若者のクリエイティビティが創意工夫と自発的な発想に変わってきていると感じている。先日あるパーティで気づいたことがある。単調に流れるノイズのような音楽、自分たちの世界に入り込んだ人たちが、各々の世界観において創造をしているという事実だ。みんなそれぞれの受け取り方で音楽を理解し楽しんでいる。シンプルで加工しやすい素材を自分なりに理解し、アレンジして少人数で理解し合っているのだ。昨今のコミュニティのあり方と同じである。
まわりには同じような現象がある。ブロックチェーンの登場によって、銀行券という信用がなくてもコミュニティ内で保障することができるようになってきたのも同じだ。貨幣さえもより目的に特化したサイズになってきている。
時代の文化を反映する宿命にある音楽とファッション。私たちバブル世代に消費財と化したようにみえたものは、実はより小さなセグメントにあわせて変化しやすいように、シンプルで質のよいものに変化したのだ。与えられたストーリーに安心を覚えたバブル世代には解りにくいが、自分たちでストーリーをつくる世代は、昔よりクリエイティブな時代であり、おもしろい時代だと気づくだろう。そのクリエイティビティを生かす環境を用意してあげられるのか。バブル世代が頑張れるかがキーとなる。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。