アジア太平洋地区でのIPv4アドレスの枯渇を受け、Internet Societyは、2011年に「World IPv6 Day」、12年にはIPv6対応を推進する「World IPv6 Launch」を実施した。
Google、Facebook、Yahoo!や米国AT&T、Comcast、KDDIなど、多くのネットワーク・プロバイダが本格的なIPv6の導入を行っている。
このような状況のなか、IPv6普及・高度化推進協議会およびIPv4アドレス枯渇対応タスクフォースでは、有力ネットワーク・プロバイダの協力のもと、12年12月から、NGNの利用者中のIPv6の利用者の割合を予測してきた。12年12月は 0.8%の普及率で、17年3月には30.5%となり30%の大台を超えた。
16年には総務省の委員会において、17年を「IPv6モバイル元年」(IPv6 Mobile Launch)と位置づける方針が合意された。その結果、日本の三つの主要モバイルキャリアである NTTドコモ、KDDI(au)、SoftBankが、17年夏をめどに、新規のスマートフォン機種に関して、IPv6サービスのディフォルト提供を行うことになった。各社では、すでにモバイル網でのディフォルトでのIPv6サービスが開始されている。データセンターにおいても、急速にIPv6によるサーバーへのアクセスが増加することが予想され、IPv6によるアクセスへの対応が必要となってくるだろう。
このようななか、大規模なクラウドシステムや広域での大規模IoTシステムにおいては、サイバーセキュリティ対策を十分に行った莫大な数のサーバーやIoT機器の運用が必須となる。すでに、IPv4のプライベートアドレス空間では足りない数の機器の収容が可能な大規模システムの構築・運用が要求されており、サイバーセキュリティ対応を含む運用コストの観点からも、IPv4/IPv6デュアルスタックではなく、IPv6シングルスタックでの運用が取り組まれつつある。九州電力におけるスマートメータシステムは、auが提供するClosed LTE網でのIPv6 シングルスタック運用で、9電力会社のなかで、最も安定した運用を実現している。最近では、TwitterがIPv6シングルスタックでの運用に挑戦することがアナウンスされた。今後は、IPv6シングルスタックによる大規模システムの構築・運用が開始・加速されるのではないだろうか。
東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 江﨑 浩

江崎 浩(えさき ひろし)
1963年生まれ、福岡県出身。1987年、九州大学工学研究科電子工学専攻修士課程修了。同年4月、東芝に入社し、ATMネットワーク制御技術の研究に従事。98年10月、東京大学大型計算機センター助教授、2005年4月より現職。WIDEプロジェクト代表。東大グリーンICTプロジェクト代表、MPLS JAPAN代表、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事、JPNIC副理事長などを務める。