アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)
1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など、多数の著書がある。
昔はよく「損得を抜きにして」という言葉が聞かれたが、最近は時代であろうか「損得でしか考えない」という人や企業が増えてきた。その意味では、デジタルファイナンスとコンテンツ事業を手がけるウエッジホールディングス(此下竜矢社長)のモンゴルの漫画家ナンパラル・エレデネバヤル氏の支援は注目に値する。
エレデネバヤル氏は、モンゴルの遊牧民族の生活や歴史、そして民族としての誇りや生き方を描いている。そんな彼が現在シリーズで取り組んでいるのが、「ボンバルダイ(Bunbardai))」という作品である。
ボンバルダイという5歳の少年が、遊牧生活のなかで一人前の遊牧民に育っていく物語である。舞台はモンゴルの大草原。そこで暮らす人々の厳しい生活とさまざまな出来事や人間関係は、スマートフォンやコンビニで生きる現代社会のわれわれには新鮮である。
モンゴルでは100万人が涙したという。モンゴルは面積こそ日本の4倍と広いものの、人口はわずか300万人とマーケットが小さく、資金力も乏しい。世界にこの作品を売り出すのは大変である。
エレデネバヤル氏の支援を買って出たのが、ウエッジホールディングスである。主にベトナム、インドネシア、タイを中心にこの作品のプロモーション事業を始める。また、エレデネバヤル氏が審査員の一人となり、先の3か国にモンゴルを加えた4か国で、アジア最大規模のイラストコンテストを開催している。この事業もウエッジホールディングスが支援している。
企業経営にとって損得は大変大事である。しかし、当面の損得だけで動くことは企業にとってリスクが大きい。このような支援活動を通じて、ふだん見えないものが見えてくる時があり、企業経営だけでは関係をもち得ない政府の関係者や文化関係者などとも交流ができる。その国の社会のなかに入り込むというのは、大変大事なことである。ビジネスの上でいざという時に役に立つこともある。
現地の経営にそれほど困っていないのなら、支障のない範囲で、このようなプロジェクトを支援してはどうだろうか。アジアの各国で1企業が1プロジェクトを支援するぐらいのことをやれば、日本企業のビジネスの景色自体も変わってくる。
アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)

1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。