事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
1968年生まれ 電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年同社執行役員就任 経営企画室長を経て2011年オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学 特任教授、地方創生音楽プロジェクト one+nation Founderなどを務める。
先日、お客様からAIの予算をとるので相談したいと連絡をいただいた。AIの予算? という疑問が浮かびながらもお話を聞いてみると、AIが内容に含まれていると開発予算が通りやすいのでうまく入れ込んで企画してほしいということだった。数年前よく「ビッグデータをやりたいんですがどうしたらよいでしょう」という相談を多数いただいたことを思い出した。
AIやビッグデータは手段であって目的ではない。そのお客様はそれを承知で話をされていたのでよいのだが、最近はバズワードに振り回されている方も多く見受けられる。最新の技術を使わないといけない、使えばユーザーが満足するサービスが提供できる。そう思っているのか、新し技術を取り入れる方向に流されている気がする。チャレンジが技術やサービスを洗練し、よりよいサービスをつくり上げていくのだと思うが、それにしてはチャレンジャブルな効果をミッションとして設定する人が多い。そこには大きな落とし穴が隠れている。一定の効果をクリアするために落としどころを探り始め、中途半端なサービスで落ち着くのが多いのもそれが原因である。
ユーザーはより高度な機能が採用されることを望んでいるのだろうか。NOだ。例えばスマートフォンにはテレビ電話機能があるが、利用頻度は低い。LINEのスタンプやチャットなど、より手軽なコミュニケーションが日常に入り込んでいる。氾濫した情報に振り回されずに、ユーザーニーズを確認しながら判断する必要がある。
昨今はAIやロボットの進化によって、人間の仕事が奪われるのではないかという記事が多い。実はこれまでも技術の進化によって、常に仕事の内容は変化し入れ替わっている。それが一気に多くの分野で起こり得る可能性があるというだけで、珍しいことではない。
素材の開発により、木材の需要が減り林業は大きく変化したし、エネルギーの変化によって炭鉱もなくなった。江戸時代にはたくさんあった人力車は、いまは観光地にしかない。そろばんから電卓にかわり、電卓はコンピュータ、スマートフォンに代替された。あげてみるときりがない。時代とともに開発された技術が仕事を奪い、新し仕事を創造している。私たちは早急に情報を取捨選択するスキルを身につける必要がある。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。