一般社団法人 みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴
松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京・八王子市生まれ。72年、慶應義塾大学工学部管理工学科卒業。94年から山梨学院大学経営情報学部助教授に就任し、現在、同学部教授。00年11月、きっとエイエスピーを設立し、代表取締役社長に就任。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
3年前に定年退職するまでの37年間、大学でAIを教えてきたが、AIがこんなに注目を浴びる時代がこれほど早く来ようとは思ってもみなかった。
最初のコンピュータといわれるENIACが1946年に生まれて今年で71年、そしてAIという言葉が56年に生まれて61年、その間、AIには二度の冬の時代があった。60年代には多くの著名人が大変楽観的な予測を述べて人々の期待を煽ったが、70年代に至ってもその成果が極めて限定的であった。80年代になるとエキスパートシステムが世界の著名企業で採用されるようになり、AIは再び脚光を浴びたが、80年代末には再び冬の時代を迎える。90年前後には世界的なAI企業が次々と市場から消え去り、日本でもいろいろな企業のAI事業部門が廃止された。そして、ビジネス機会を失ったAI従事者の多くがインターネットへと居場所を移した。私もそんな一人だった。AIが世の中から忘れ去られたかのような時代だった。
そして、このAIブームである。今回は楽観論者のレイ・カーツワイルによるところが少なくないが、その背景には、この20数年間に蓄積されたさまざまな分野での実績がある。インターネット検索、データマイニング、産業用ロボット、音声認識、自動翻訳、医療診断、自動運転、気がつけばAIの実用性を示す例は至る所にみられる。これらの事例から、AIが応用数学、物理学、確率・統計、ニューラルネットワークなどの従来の学問分野を効果的に取り込み、これまでになく洗練された問題解決手法として確立されてきたことをうかがい知ることができる。
私たちの身の回りには、コンピュータによる処理を実現できていない問題がまだたくさん残されている。そのなかには、数多くある既存の学問を個別に適用したのでは解決のめどが立たないというものも多い。これら既存の学問では解き方がわからない問題、方程式や定型的な手順ではその解き方を記述できない問題について、その解き方をみつける道具としてAIという問題解決手法がある。今回のブームを一過性のものとしないためにも、AIに興味を抱いた多くの人々に、AIを高度な問題解決手法として理解し、実際に活用していただく環境の整備が求められる。
一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫
略歴

松田 利夫(まつだ としお)
1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。