一般社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事 久保田 裕
略歴
久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は2017年6月7日、JASRACが管理する楽曲の使用料規定に「音楽教室における演奏等」を新設し、文化庁長官への届け出を行った。本規定は18年1月1日より実施予定とのことだ。
これに対し、音楽事業を営む企業および団体で構成される「音楽教育を守る会」の会員・団体249社は17年6月20日に、音楽教室でのレッスンにおいて音楽を奏する行為が、著作権法に定める演奏権(22条)の許諾を必要とする行為ではなく、JASRACに使用料を徴収する権限がないことを確認する訴訟を東京地方裁判所に提起した。
本訴訟の争点は、音楽教室での教師や生徒による楽器演奏や録音物の再生行為が演奏権の範囲内かどうか、すなわち「公衆に聞かせることを目的とした演奏等」であるか否かである。なお、著作権法における「公衆」とは、不特定多数の人に限定されず、不特定少数および特定多数の人も含む概念である。どのような司法判断が示されるか訴訟の経緯を見守りたい。
ところで、この問題が報道などで取り上げられるようになってから、インターネット上では一般の方々からアーティストまでさまざまな意見が表明されている。著作権に関心をもってもらえるのはありがたいことだが、本件に限らず、著作権に関するニュースに対して、著作権をもっている側の主張を無条件に批判する意見が多くみられるのがとても残念だ。もちろん、なかには正当な批判もみられるが、著作権者や著作権制度を批判する理由が、他人の作品を自由に使いたい、という願望であるとすればそれは違うのではないかと思う。
著作権は「作った人に権利がある」ことを定めたルールであり、「著作権者の許可を得れば他人の作品(著作物)を利用できる」というルールなのだ。まずはこの大原則を理解していただきたい。許諾を得れば使えるのだ。そのうえで、個々の問題についてのニュースや解説記事をみていただければ、バランスのよい思考をすることができるのではないだろうか。
誰もが著作物を創作し公開するとともに、他人の創作した著作物を利用する現代だからこそ、バランスのよい視点をもっていただきたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。