「警備会社から連絡がありまして、ネット回線が切れているみたいです」。7月のある土曜日、自宅で仕事をしていると電話がかかってきた。事務所に駆けつけてみると、警備会社の担当者が管理人室で困った顔をしていた。「本部の指示通り、モデムのオフオンをしてみたのですが……」。
ネットワークの全体の構成がわかっていると、何が原因かを詰めていく手順を決めることができる。まずは、警備の回線と同じハブを使っているパソコンを立ち上げてみる。やはりネットがつながっていない。ここまで信号がきていないことがわかる。次に同じ施設内の他の事務所に問い合わせてみる。「午後2時頃切れました」。こうなると、分岐元のマシンルームにある全体の信号を分ける前が怪しい。メディアコンバータのランプをみる。出側はブリンクしているが、入側が点灯したままだ。
ここで、原因が建物の外側であることがわかった。通信会社に連絡して復旧工事をしてもらい、2時間後には復旧した。大学などで基礎を学ぶ理由として、問題解決のスピードの話をすることがある。基礎を学び構造がわかると、理論的に原因に早くたどり着くことができる。端から攻めていくのではなく、トラブルの「匂い」を感じることができる。
今回は、そうした構成の理解に加えて、あの点滅するライトの重要性を感じた。30年ほど前に最初にモデムをみた時から、ライトは光って状況を知らせていた。初期の設計者はスゴイ。技術が進んだ今でもライトは点滅して稼働状況を知らせている。
組織において活動するとき、重要なことの一つにメンバー間の意志疎通がある。メンバーの間でも意思疎通のライトがあるといいなと思う。そうすると、もっとコミュニケーションがよくなり、炎上する前に異常が早くわかる。伝わっていないなとわかる。
最近のさまざまなトラブルをみていると、通信手段はスマートフォンやメッセージングアプリで急速に発達してきているが、意思の疎通確認は遅れたままであることがわかる。ブリンクするライトをみてそんなことを想う週末であった。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。