徳島県庁の庁舎が、藍色のLEDでライトアップされた。藍の主要産地である徳島は、藍色を「徳島ブルー」として強調。また、LED関連企業の集積地を「LEDバレイ徳島」としてアピールしている。これを手がけたのが、電子機器装置などを製造するサン電子工業である。サンシステムエンジニアリングは、同社のグループ企業。自治体関連を中心にシステム開発を行ってきたが、グループの強みを生かすべく、ハードウェア関連も手がけている。なかでもIoT関連は、今後の成長事業として、大きな期待を寄せている。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 サンシステムエンジニアリング
所在地 徳島県藍住町
資本金 1000万円
設立 1986年
社員数 9名
事業概要 コンピュータソフトウェアの開発・販売、コンピュータハードウェアの販売、システム保守・データ入力
URL:http://www.3system.co.jp/
マイナンバー特需で奮闘
楠本克仁
代表取締役
「自治体関連は、今後も注力していく」と、楠本克仁代表取締役は語る。サンシステムエンジニアリングは、NEC系のオフコン上でシステム開発をしていた経験がきっかけで、地域の自治体からシステム開発案件を請け負ってきた。主に担ってきたのは、同社の規模でも対応できるサブシステムの開発。その後、オープン化によるクライアント/サーバー型のシステムへ移行が進んでも、継続してシステム開発を担ってきている。
最近では、マイナンバー(社会保障・税番号)制度に関連したシステム改修の特需があるなど、自治体関連は同社の業績に大きく貢献している。マイナンバーについて、楠本代表取締役は、「あまりにも複雑。仕様では問題ないはずが、動かしてみてわかることもあり、現場では大変な思いをしている」と語る。マイナンバー制度では、さまざまなシステムが接続される。小さなトラブルが噴出することは、容易に想像することができる。
自治体関連の事業について、楠本代表取締役は、「平成の大合併は、当社の規模では大きな影響がなかった。マイナンバー特需があったし、保守の案件も安定的にある」と語る一方で、「いつまでも続くとは限らない」とも。平成の大合併で自治体の数が減り、徳島県の人口も減少傾向にある。自治体関連は今後も注力していくとはいえ、新たな事業の展開も必要とされている。
サイネージを全国に展開
新事業として取り組んでいることの一つが、デジタルサイネージだ。自治体の業務を知っている強みを生かし、地域の観光PR用サイネージなどに取り組んでいる。なかでも、NECとの関係は深く、NECディスプレイソリューションズの「NECDSパートナープログラム」の会員として、同社は四国で唯一認定されている。
「NECDSパートナープログラムは、ハードの取り扱いだけでなく、ソフトウェアの開発力が問われるため、ハードルが高い」と楠本代表取締役。最近では、東京五輪に向けたインバウンドを対象としたサイネージに需要があり、四国だけでなく、全国を対象に事業を展開している。
デジタルサイネージへの取り組みについて、楠本代表取締役は、「映像系は自治体の庁内向けシステムの開発とは大きく異なるが、開発言語の違いなどの最初のハードルを越えてしまえば、大きな問題とはならない。最後は、顧客が何を望んでいるか。その対応になる。地域密着型となるには、そこが大事」と語り、SIerとしてのノウハウが生きるとしている。サンシステムエンジニアリングが開発した徳島駅前のサイネージは、現在も同社によって運用されている。
また、グループ企業のサン電子工業と一緒にIoT関連にも取り組んでいる。狙うのは、ハードウェアを要望に応じて開発するニッチな市場だ。「ニッチなニーズに応えるハードウェアは、海外に発注したらコストが見合わない。日本で製造したほうが安い」(楠本代表取締役)。LEDバレイ徳島に代表されるように、地域の特色を生かした取り組みを推進していく予定だ。
ふるさと創生IT協同組合に参加
サンシステムエンジニアリングは、設立当初から元請け志向で、デジタルサイネージにおいても、その考えは継承している。ただし、現状では首都圏の案件を元請けとして受注するのは難しいという。
「首都圏の企業とのパイプがなく、当社はなかなか入札に参加できない。下請けであれば多くの仕事があるが、単価が安すぎる。オフショア感覚で発注されると儲からない。強みに特化できればいいが、その強みをアピールするのも簡単ではない」ことから、楠本代表取締役は「ふるさと創生IT協同組合」に参加した。同組合のスタートは2017年5月。山梨県のジインズを中心に、受託開発を担う地域のSIer、5社で構成。各社が協力し、それぞれの強みを生かしながら、首都圏の案件をしっかり利益が出るかたちで請け負うことを目指す。サンシステムエンジニアリングは、デジタルサイネージとシステム開発で、同組合に貢献していく予定である。
「地域の人口が減少していて、エンジニアの確保が難しくなっている。現状を打破するには、地域を活性化させなければいけない。ふるさと創生IT協同組合の活動を盛り上げることが、エンジニアのUターンやIターンのきっかけになればと考えている」と、楠本代表取締役は同組合の活動に期待を寄せている。