徳島県内の自治体や企業を対象に、システム構築を手がけているサンエックス情報システム。なかでも自治体向けは、同社の売り上げの多くを占めており、「これまでリーマン・ショックや大震災など、いろいろな経済危機があったが、自治体向けでなんとか乗り切ってきた」と、外山邦夫代表取締役は振り返る。とはいえ、自治体関連の案件が永遠に続くわけもなく、将来を見据えた展開が必要とされている。外山代表取締役は、「目先と数年先と何年か先」と三段階に分けて、新しい事業を模索している。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 サンエックス情報システム
所在地 徳島県徳島市
資本金 1200万円
設立 1985年
社員数 1922名
事業概要 コンピュータソフトウェア開発、コンピュータソリューション提案・販売、情報システム運用管理・保守
URL:http://www.sanx-info.co.jp/
地域密着のSIer
外山邦夫
代表取締役
サンエックス情報システムが自治体関連の案件を手がけるようになったのは、西暦2000年問題がきっかけだという。「西暦2000年問題の対応でエンジニアが不足しているとのことで、当社に声がかかった。そこから、複数の自治体へと広げてきた」と、外山代表取締役は経緯を説明する。現在では、香川県の自治体も、同社の顧客となっている。
サンエックス情報システムは、地域密着型のSIerである。徳島県を中心に自治体以外にも、ガス会社や食品加工会社など、県内大手企業のシステム開発を担っている。地域密着型にこだわる理由について、外山代表取締役は次のように説明する。
「以前は、首都圏に事務所を置き、10人体制でエンジニアを大手ITベンダーに派遣していた。派遣は、資金繰りが楽になるので経営が安定しやすい。あんなラクな商売はほかにない。しかし、社員が引き抜かれてしまうことが多く、会社の財産としては何も残らない」。首都圏の現場への派遣となれば、徳島の企業に所属していなくてもいい。給料面などで条件のいい会社があれば、そこに転職してしまう。そう実感した外山代表取締役は、10年程前に首都圏から撤退している。
以降、エンジニア派遣を三分の一に減らし、パッケージシステムの開発や元請けの案件に注力している。「パッケージシステムは、開発時は資金が出ていくだけで、売れるまで資金繰りが大変だった。なんとか開発費用を回収できたので、最近になってようやく軌道に乗りつつある」。国民健康保険組合業務システム「ハートフルKOKUHO」、小・中学校の臨時職員給与システム「ユニコーン」、ウェブサイト構築運用支援システム「3X web Polaris」が、同社の主力製品となっている。
数年先と何年か先のビジネス
これから数年先のビジネスとして、外山代表取締役は今、他社ソリューションの販売に取り組んでいる。「おもしろいソリューションを求めて、全国へネタ探しに行っている。商圏が重ならないことを意識して、数年先のためにソリューションの開拓に取り組んでいる」。数年先というのは、1年先か2年先という感覚である。
そして、さらに先(何年か先)のビジネスとして、地域貢献・地域の活性化事業に取り組んでいる。なかでも注目しているのが、農業ITだ。
「農業ITによって、いろいろな人が儲けられるようになれば、地域が活性化する。そのような取り組みをやっていきたい。例えば、LEDを活用した植物工場。年間で2回収穫しているところ、LEDによって10回収穫できるようにする」と、外山代表取締役は意欲的だ。まだ実績はないが、利用可能な廃校が地域にあり、そこで漢方薬になるような付加価値の高い薬草などを育てれば、ビジネスとして展開しやすいと考えている。
「LEDを使った光関連のノウハウは、クラウドで管理できる。それらはどこでも応用できるため、横展開がしやすい」と外山代表取締役。「LEDバレイ徳島」など、徳島県がLEDに関連する取り組みに注力していることも追い風になりそうだ。サンエックス情報システムでLEDを生産するわけではないが、「あるモノは使ったらいい」との考えで取り組んでいる。
外山代表取締役は、四国各県のIT企業と連携し、「四国IT農援隊」として、農業ITの普及活動にも取り組んでいる。キャッチフレーズは、「四国から日本の農業を元気にする!」。植物工場のほか、ドローンの活用や自動運転トラクター、自動分析コンバインなどを活用した農業の近代化に努めている。
そのほか、徳島の観光資源を生かすための取り組みも始めている。「農業や観光だけでなく、いろいろなところでITが活用され始めている。そこに当社がどう絡んでいくべきか」と、外山代表取締役は、何年か先の取り組みとして、同社の立ち位置を模索している。