事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクト one+nation Founderなどを務める。
先日催眠術の研修にいってきた。(オカルトチックな集団にみえてしまうかもしれないが、そんなことはないのでご安心を)
一日で催眠術が使えるようになったわけではないが、多くの気づきと新規事業開発への視座として参考になったので紹介したい。催眠術をかけるためにはまずかかるコツを会得するほうが早いということで、握ったこぶしが開かなくなる体験をした。それは当初想像していた石膏のようなもので固められて力を入れても開かないという感覚とは違い、力がまったく入らないというものだった。その感覚を覚えてしまうと自分で自分に暗示をかけることができるようになった。腕の神経に脳からの指示が行かなくなった感覚だ。コツはこぶしが開かない様子を視覚として固定させること。
人が認識するための情報は8割を目が支配するといわれている。動かなかった手が動く映像をVRでみながらリハビリすることで、回復までの期間が短縮する事例も報告されている。また、人間の脳は目からの情報を見たいもの、認識したいものの情報にフォーカスしながら脳に伝えるといわれており、これを見ようと意識することである程度の情報を選択していることになる。つまり真実がどこにあるかをフォーカスした時点で方向性を決めており、真実がその方向にない場合は気づきにくいことになる。
私にとって催眠術の経験は、情報の選別が脳に与える方向指示の役割を担っていることを認識させてくれた。
企業内において新しい事業やプロジェクトを立ち上げようとしたときには、多くの人がシナジーや現在のマーケット状況や競合情報を指摘する。これらのフォーマットがリスクを少なくすることは確かだが、同時に方向性を決めてしまうことも明らかだ。情報を選別するように新規事業の可能性を決められた要素だけで判断することは、多くの可能性も減らしている。そこを留意し、多方面からの可能性を許容するリスクのとり方も必要である。ある機関投資家が投資するかどうかの最後の判断要素は、『描いた未来をどれだけ信じているかどうか』と言っていた。未来はやはり信じて突破し、つくり出すものである。信じ切れる自分をつくる作業に催眠術は似ている。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。