IoTやロボットなど、さまざまな分野でソフトウェア制御が必要とされるようになったため、組み込みシステム開発の分野が大いに盛り上がっている。プラスワンモードでも、開発の依頼が増えているという。しかし、案件が増えたとしても、それに対応するのは容易ではない。人材の確保が難しいからだ。組み込みシステム開発とはいえ、CPUやOSなどの機能が向上し、開発環境が整備されたため、一般的なソフトウェア開発のノウハウを生かすことができる状況にある。組み込みシステム開発の経験者以外でもいいはずだが、現実は違うようだ。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 プラスワンモード
所在地 山形県山形市
資本金 550万円
設立 2009年10月
社員数 4人
事業概要 組み込みシステム開発、ウェブサイトの企画・製作・販売
URL:http://p1mode.co.jp/
今は組み込みが熱い
黒澤幹男
代表取締役
山形市に本社を置くプラスワンモードは、ウェブサイトの制作やSEO対策なども手がけているが、事業の柱は組み込みシステム開発である。
「システム開発の会社として、何に特化するとは決めずにスタートしたが、前職で組み込みシステムの開発を手がけていたことから、その経験を生かして現在に至っている。組み込みシステムは、メーカーの信頼を得ることができれば長いつき合いになるのが大きなメリット。プロジェクトが終わっても、すぐに新製品の開発が始まる」と、黒澤幹男代表取締役は組み込みシステム開発について語る。同社の社員は、メーカーに出向き、組み込みシステムの開発を担っている。
組み込みシステム開発は、IoTやロボットへと範囲が広がったことで、多くの案件が動いている。プラスワンモードにも、問い合わせが多いという。
「以前は、組み込みというとマイナーなイメージがあった。それが、現在では熱い分野になっている。キーワードは“自動”。話題の自動運転車もそうだが、工場やオフィスでも自動化が進んでいて、そこでは制御するソフトウェアが必要となる。組み込みのエリアが広がったことで、以前よりも仕事の範囲が広がっている」(黒澤代表取締役)という。
ちなみに、黒澤代表取締役は、これまでの経験から自動運転車の実現について簡単ではないと感じている。「カメラを使った画像認識は、雪が降ると処理が非常に難しくなる。真っ白で、何も判断ができないため。大雨の場合も、画像認識が困難になる。道路にセンサを埋めるなどをしない限り、雪や大雨の対策をどうクリアするのかが、大きな課題になるのではないか」。組み込みシステムで重要なのは、エラー処理であり、想定通りのノーマルな対応よりも重要になるという。
課題は人材の確保
プラスワンモードの社員は、現在のところ4名。案件が多いだけに増員したいところだが、採用するのは難しい状況にある。
「いかに人材を確保するかは、大きな課題。メーカー側は経験者を求めていて、組み込みシステム開発の未経験者を受け入れてくれない。そのため、社員を増やしにくい。せめて、経験者とセットで受け入れてもらえれば、現場で育てることができるが、それは認められない」と、黒澤代表取締役は採用の難しさを語る。10人体制にすることを理想としているが、採用は進んでいない。
組み込みシステム開発とはいえ、最近ではCPUやOSの進歩により、業務システムの開発で利用する一般的な開発言語が利用できる。そのため、組み込みシステム開発の未経験者でも、システム開発の経験者であれば、対応できる状況にある。違いといえば、「ハードウェアの知識も少し必要」という程度とのこと。ハードルは決して高くないが、経験者の応募を待つしかない状況にある。
そうした背景もあって、黒澤代表取締役は今後、組み込みシステム開発以外の分野を広げていくことを志向している。「組み込みシステムといっても、実質はPCのアプリケーションと変わらない。業務システムなどの開発にも、十分に対応できる。また、私自身、プログラマとして、組み込み以外のシステム開発を経験しているため、市場ニーズに合わせて柔軟に対応できると考えている。例えば、IoTでは業務システムとの連携が必要とされるため、組み込みシステム開発の延長として、当社のノウハウが生きてくる」。組み込みシステム開発のノウハウを横展開するというわけだ。
組み込みシステム開発は、東京や仙台の案件が中心で、地元の山形でのニーズがない。そこで黒澤代表取締役は、ウェブサイトの構築やSEO対策などを手がけることにより、地域の企業に貢献したいと考えている。