「クラウド時代になろうと、本質的にはSIerの役割は変わらない」と、ステラリンクの前田保宏社長はきっぱりといい切る。顧客のビジネスや業務プロセスを理解したうえで、顧客の目指す成果を実現するためのシステムを実現するのが本分というわけだ。ただし、ITは常に進化し続けている。顧客に提供できる価値を最大化するためには、新しい技術を継続的に吸収しながら、知識とスキルをアップデートし続け、柔軟な思考を保つ必要があるというのが同社の基本的な考え方だ。(取材・文/本多和幸)
Company Data
会社名 ステラリンク
所在地 東京都千代田区
設立 2012年7月
事業概要 システムインテグレーション事業
国産業務ソフトの再販+SIが核
前田保宏
代表取締役社長
国産大手総合ITベンダーでキャリアを積んだ前田社長は、「自らものづくりの事業を手がけたい」という思いをもち、オリジナルのIT商材のメーカーを志向して2012年に起業した。しかし、2年間、ほぼ一人で試行錯誤した末に、まずは経営の基盤づくりが必要だという結論に至り、システム開発とパッケージソフト、ハードウェアの販売にまでビジネスドメインを拡大した。
売上高や利益の成長にもっとも貢献してきたのは、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、応研といった国産基幹業務ソフトウェアベンダーのパートナーとしてのビジネスだ。ソフトウェアパッケージ、場合によってはハードウェアまで含めた販売、導入コンサルティング、カスタマイズ、運用保守までを含め、顧客のバックオフィスを網羅的に支えるサービスを提供してきた。
この期間、同時に、前田社長の創業時の志を貫いて独自商材の開発も継続し、会員向け動画広告配信サービス「Supplica」や、情報配信系のアプリ、デジタルサイネージコンテンツ運用ソフト「StellarSign」などを世に出している。ただし、会社組織が出来上がった14年から16年までの3年間で前田社長が実感したのは、「基盤となる収益事業をさらに確固たるものにしなければ、独自商材で飛躍的な成長を遂げるのも難しい」ということだった。そこで、17年は独自商材の開発を一旦ストップし、基幹系パッケージソフトの再販+SIのビジネスの基盤固めに力を注ぐことにした。
韓国発クラウドERPでさらなる成長
こうした流れのなかで、ステラリンクが今年、基幹系のパッケージソフトビジネスのラインアップに新たに加えたのが、韓国発のクラウドERP「SystemEver」だ。前田社長は、「これまで当社が扱ってきた基幹系パッケージソフトは、会計、人事給与、販売管理が中心だったが、SystemEverと出会ったことにより、“真のERP”を中小企業にも現実的なコストで提供できるようになった。SystemEverは、企業活動における主要業務をほとんどカバーできるモジュールを単一のデータモデルのしたに揃えていて、経営層の意思決定を強力にサポートできる」と、同製品のメリットを説明する。
日本国内では、いちはやく同製品の販売・インプリパートナーとして名乗りを上げた。年内に早くも3件の受注を見込んでおり、拡販への手ごたえを感じているという。「これまで手がけてきた国産業務ソフトの機能モジュールと連携したかたちでERPを導入・運用するケースも考えられ、培ってきたノウハウをエンハンスするかたちでビジネスを拡大していけると考えている。ERPの導入ビジネスでは、従来以上に業種を深堀りしたかたちで仕事ができるSEの体制も必要になるが、そうした人員の整備もかたちができた」(前田社長)。
SystemEverはクラウドネイティブで開発されたSaaS製品であり、提供形態はサブスクリプション型だ。前田社長は、「ストック型のクラウドビジネス拡大にも貢献してくれる」との期待も示している。国産業務ソフトに関しては、サブスクリプションモデルによるSaaS化が本格的に進むのはこれからだが、並行してSystemEverを手がけることで、クラウド時代に合わせたビジネスモデルの変革を無理のないかたちで進められると考えているようだ。
さらに、これらの基幹系パッケージソフトビジネスと関連して、RPAにも力を入れていく。「ERPや業務ソフト、RPA、そして遠隔のサポートサービスをセットにしたソリューションで働き方改革を実現するという当社の提案が評価されるようになってきていて、お客様もそこに投資しようという意識が高まっている」とのことで、今年下期は具体的な商談が激増しているという。「常に新しいキーワード、新しい考え方を取り入れ、お客様のニーズを汲んで、柔軟な考え方でソリューション提案を実践していけば道は開ける」と話す前田社長。18年には、独自商材の開発や市場投入も再開し、さらなる成長軌道を描く意向だ。