SIerとしてのビジネスに心から誇りをもっている。それが、コンピューターマネージメント(CMK)の竹中勝昭社長の印象だ。現在はプライベートカンパニーだが、近い将来の株式公開も見据え、継続的に成長可能なビジネスモデルの構築に取り組んでいる。竹中社長いわく、「広く、深く顧客を知り、最新の技術を常に吸収しながら、上流から下流まで、一気通貫でサポートすることこそがSIerの使命」なのだ。(取材・文/本多和幸)
Company Data
会社名 コンピューターマネージメント
所在地 大阪市港区
設立 1981年11月
資本金 8072万円
事業概要 システムインテグレーション事業、金融・公共ソリューション事業、ERPソリューション事業、システムインフラコンサルティング事業、システム運用サービス事業
SIer ≠ デベロッパー
「SIerは単なるデベロッパーとは違う」と話す竹中社長の言葉には、それまで以上に力がこもった。「われわれは本当の意味でSIerと呼ばれる世界でビジネスをやりたい。開発だけしかやらないデベロッパーは、好不況の影響を受けてつぶれていった会社がたくさんある。SIerは、部分開発だけをやるようなビジネスとは根本的に違って、ユーザーのビジネスを一緒にやっていくパートナー。彼らのビジネスを理解してITによる変革や課題解決を支援していく、ユーザーオリエンテッドなビジネスといえる」。
竹中勝昭 代表取締役社長
同社のコア事業であるシステム・インテグレーション事業では、「顧客がコア・コンピテンシーに集中でき、さらなる業容拡大に寄与できるシステムの構築」をコンセプトに成長を遂げてきたが、これに加え、システムインフラのコンサルティング事業や、ヘルプデスク、キッティングサービスなどを含むシステム運用サービスなど、まさに上流から下流までの情報サービスを提供してきた。また、金融・公共向けの業種特化型ソリューションや、SAPのERP導入支援も手がけ、「ここ数年は10%~20%の増収増益」という好調ぶりだ。
竹中社長にいわせれば、これらのサービスメニューはすべてユーザーに必要とされたからこそラインアップに加えてきたのだという。そして、ユーザーの本当のニーズを見誤らずにSIerとしてビジネスを拡大していくためには、「幅広い産業分野の業務、あらゆるレイヤの情報技術に対する知識・ノウハウが必要になるが、その前提として何よりも大事なのは人材」だと考えている。竹中社長は、「おいしいラーメン屋には、並んででも食べたい人で行列ができる。当社はまさにそういうSIerになりたい。スピード感のある、コミュニケーション力の高い人材をもって品質のいい情報技術サービスを提供していくことで、お客様の満足度が上がり、リピーターになってくれる」と話す。
ワコール、ダスキンといった大手企業からもプライムで案件を獲得しているが、彼らはCMKの人材の価値を認めたからこそ、いまも情報戦略のパートナーとしてつきあってくれているのだという。
実際に、人材確保・教育への投資は継続して積極的に行っている。近年は、毎年20人ほどの新卒採用を行っているが、それ以上の数のエンジニアを中途採用し、PMP資格取得者を毎年10人規模で育てている。竹中社長は、「行列のできるSIerを目指そうと思ったら、それなりの規模感も必要。顧客側からみたときの安心感もあるし、ビジネス上のスケールメリットも出てくる。現在は500人体制だが、早く1000人体制までもっていきたい」と展望を語る。
新興技術活用のR&Dにも投資
同社はこれまで、現場の人材から吸い上げた顧客ニーズを基礎として、都度最新の技術を取り込んだ提案を行ってきたが、“行列のできるSIer”になるためには、R&Dの観点からもさらなる投資が必要だとみている。デジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドは大きなうねりとなっていて、新興技術のキャッチアップの仕方が、SIerの今後のビジネスのあり方を大きく左右すると考えているからだ。
竹中社長は、「AIやIoTは単なるブームではなく、DXを構成する重要な要素として、時代の大きな移り変わりをもたらそうとしている。ネットワークの世界でも、5Gが登場すれば情報システムにまた大きな変化をもたらす。さらに直近では、量子コンピュータも実用化に向けた道筋がみえてきて、AIがさらに飛躍的に進歩する可能性もある」と話す。そのうえで、「われわれはこうした稀にみる大きな変革の中核でビジネスをしているわけで、この機会を逃す手はない。これまでR&D投資予算というのは設定していなかったが、そろそろこれを経営戦略のなかに盛り込み、新興技術を活用したソリューションを、大手メーカーなどとも協業を深めながら整備していきたい。お客様の要望に応えるだけでなく、変革をガイドしていくようなビジネスに踏み出せば、行列はきっとできる」と力を込める。こうした戦略を盤石のものにするためにも、規模の拡大と株式上場を含めた企業ブランド力の強化は重要になってくるという。