事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。
仮想通貨の暴騰と暴落が話題を呼んでいる。2016年末に仮想通貨元年という一面広告を見た覚えがある。あれから一年、仮想通貨は一般用語として認知度を高めた。11月8日に75万円だったビットコインは、12月2日には210万円を超えた。その後、中国のビットコイン取引の禁止報道やさまざまなネガティブ情報が売りを呼び、18年2月6日には60万円台にまで暴落している。
これだけ価値が上下したら本来、価値の交換手段として存在する通貨としては成り立たない。もともと通貨は、物々交換が主だった時代に、生ものなど保存できないものは、葉っぱでつくられた紙幣のようなものと交換して価値を保存したことが始まりだといわれている。その後、交換媒体として価値をもつ金がその代替となり、さらに中央銀行が発行するという信頼のもと、銀行券へと変貌してきた歴史がある。そういう意味ではこんなに乱高下しては交換通貨としての役割を担うことはできない。
さまざまな通貨が発行され、その売買によって億万長者がうまれたと報道されている。確かに通貨の上場前から保有していた場合、数百倍というとんでもない数字になっているものがたくさんある。仮想通貨資産が数千億という人もいると聞く。しかし、この数千億は価値交換が難しい。ビットコインのように支払いに使えない派生コインは、ドルや円に交換しない限り、モノを買ったりすることはできない。ましてや数千億を換金しようとしたら大暴落するし、それだけの買い手がいない可能性も高い。まだまだ従来の法貨をすべて代替するわけにはいかないし、通貨ではなく投機商品としかいえない段階だ。
年末あたりから仮想通貨関連の情報商材が出回っているが、多くは未上場コインの売買関連である。未上場コインは上場しなければ価値はゼロである。そして初期保有者が相場を乱高下させることができるくらいに市場は小さい。まだまだ投機以外の何物でもないことを認識したうえで参加すべきものである。
仮想通貨長者の登場で本来の役割を見失いがちであるが、使用期限を区切ったイベント通貨や、早く使ったほうが価値が高い日々価値が下がる商店街通貨など、価値交換手段としておもしろい使い方はアイデア次第だ。早く新しい機能としての仮想通貨の登場をみてみたい。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。