理化学機器、産業機器、医療・看護用品を扱う商社であるアズワン。事業が成長するにつれて、顧客や販売代理店からの問い合わせの最前線であるサポートセンターの業務負荷は増大するばかりだった。ペーパーレス化による業務改革が、課題解決の解となった。
<導入企業>アズワン
理化学機器、産業機器、医療・看護用品を扱う商社
<決断した人>
(左から)
葭哲二 営業本部 営業企画部部長
丸山智史 IT推進部 スーパーバイザー
奥村真衣 西日本ラボ・インダストリーセールスサポートセンター エキスパート
※所属・役職はいずれも取材当時
<課題>
サポートセンターで、ファックスによる販売代理店からの注文、問い合わせへの対応がオペレータの大きな負荷になっていた
<対策>
富士ゼロックスのドキュメントハンドリングソフト「DocuWorks」を採用し、オペレータの業務状況を可視化する仕組みなども付加
<考課>
残業、早出の時間を削減するとともに、ディーラーへのレスポンスや社内展開のスピードを改善
月10万枚のファックスを人力で処理
アズワンは、ファブレスメーカーとして一部オリジナル商品も企画・販売しているが、ビジネスモデルの基本形は、独自に構築した販売チャネルを活用し、膨大な種類の商品をディーラー経由でエンドユーザーに届けるかたちだ。ディーラーは、エンドユーザーから注文が入ると、アズワンに商品の価格や納期について問い合わせることになるわけだが、アズワン側でその窓口となっているのが、本社のある大阪、そして東京の二か所に設置したサポートセンターだ。事業の成長に伴い、このサポートセンターの業務における課題が顕在化する。最大の問題は、「サポートセンターが紙で溢れてしまっている」(葭哲二・営業本部営業企画部部長)ことだった。
もともとは、営業担当者が直接ディーラーからの注文や問い合わせに対応していたが、ディーラー網が拡大するにあたってその負荷が増大し、とうとう営業活動に支障が出る状況にまでなってしまったという。そこで、ディーラーからの注文、問い合わせの専門窓口となるサポートセンターを立ち上げ、問題解決を図った経緯がある。まずはCTIシステムを整備し、電話対応については、ある程度満足できるレベルの業務効率化を比較的すぐに実現した。しかし、ファックスでのやり取りが相当数残ったままになっていた。
アズワンのサポートセンターに着信するファックスは月平均約6万枚、送信でも約4万枚という規模だ。これをどう処理していたかというと、着信したファックス用紙が溜まっているのに気づいたオペレータが席を立って回収し、内容に目を通し、担当オペレータに振り分けるというプロセスを手作業で行っていたのだ。送信時も然り、である。葭部長は、「この無駄な時間をなんとかしなければというのは非常に問題意識として大きかった。また、サポートセンターはファックスの受送信紙を一定期間保管しているが、これがオフィスのスペースを圧迫するし、プリンタやファックス機器も大量に置いていて、とにかく手狭だった」と振り返る。また、オペレータ業務に携わる西日本ラボ・インダストリーセールスサポートセンター エキスパートの奥村真衣氏によれば、「保管している紙の山から、かなり前のファックスを探して対応しなければならない場面もあった」といい、ディーラーとのファックスでのやり取りを紙で運用するのは限界だった。
現場の使いやすさを最重要視
こうした現場からの改善要望を受け、情報システム部門もITソリューション探しに動いた。展示会などに足を運んだが、なかなかアズワンの課題に適合するものがみつからなかったという。そこで、つき合いのあるベンダーに声をかけて情報提供してもらい、いくつかフィットしそうなソリューションを絞り込んだ。そこから最終的に、富士ゼロックスのドキュメントハンドリングソフト「DocuWorks」を採用し、ペーパーレス化の仕組みを構築した。ファックスは、着信すると自動的に電子化され、ディーラーごとの担当オペレータに振り分けられる。
IT推進部の丸山智史スーパーバイザーは、「さまざまな帳票が送られてくるので、パッと見て対応の優先順位をオペレータが判断できるようなわかりやすいUIになっていることを重視した。また、システム導入をする際は、現場が使い方を新しく覚えなければならず、操作性も重要なポイントになる。DocuWorksは直観的に操作しやすく、操作性がすごくよかった。比較した他のソリューションとコスト自体はそれほど差がなかったが、入れても使われなければ意味がない」と選定理由を説明する。葭部長も、「大量に届くファックスの振り分けを何とかシステム内で完結させてオペレータがPCですべて対応できるようにしたかったので、IT推進部からDocuWorksの話を聞いたときは課題が全部解決できると思った」と振り返る。
採用が決まった後は、半年ほどかけて富士ゼロックスと準備を続け、DocuWorksで電子化したデータを処理するだけでなく、各オペレータの業務量を見える化する仕組みも付加するなど、アズワン側の要望を反映させたシステムを構築した。
稼働後は、オペレータの業務効率が向上したことを実感しているという。葭部長は、「オペレータの残業や、夜に溜まったファックスを仕分けするための早出が大幅に減ったのはもちろん、何よりもディーラーへのレスポンスが改善し、社内への展開も早くなった。また、ペーパーレス化したことでオペレータの業務の状況を可視化できるようにもなり、サポートセンターの運用も最適化することができた」と手応えを語る。現在はOCRと組み合わせたRPAの導入なども検討しており、さらなる自動化を目指す方針だ。