2月6日と7日、中小企業庁、九州経済産業局、ハイパーネットワーク社会研究所が主催した「情報モラルシンポジウムin大分」に講師として参加してきた。私が登壇した1日目は、「新たなビジネス展開のための情報モラル」がテーマで、私は「情報モラルと著作権」という与えられた演目に加え、今回の全体テーマに合致するだろうと考え、情報モラル都市宣言について話をした。
情報モラル都市宣言は、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が10年前に策定したコンセプトである。このコンセプトにもとづき、2008年4月、シンポジウムを開催し、川崎・那覇市の当時の阿部、翁長両市長がマイクロソフトを立会人として「知的財産モラル都市宣言」を行った。川崎市は企業や研究機関がもつ特許の活用を進めることで、市内に立地する企業などの競争力を底上げしようという意図をもっていたし、那覇市は観光資源でもある豊富な伝統文化の継承と発信に力を入れており、文化コンテンツを知的財産として保護することが地域の人の元気や活性化に役立つとしていた。
このシンポジウムを受けて、当時、「知的財産モラルに立脚した地域活性化策~文化・産業発展の新しい形を目指して~」と題した提言書を発行した。ここには、「情報が価値を生む時代である。情報の価値こそが知的財産といっても過言ではない。これからの新しい時代においては、知的財産と、それを守ろうとするモラルへの取り組みが地域の価値を決定する」と書いた。そのうえで、「地域の文化に根ざした活性化を目指すうえでも、産業発展を目指すうえでも、これからの地域が執るべき施策として、知的財産モラルに立脚すること」「知的財産モラルやICTに精通した人材を育て、見識と情報発信力をもったリーダーのもと、地域の個性を世界に向けて発信すること」といったことを提言した。
冒頭に書いた大分でのシンポジウムを主催したハイパーネットワーク社会研究所は、情報モラルの啓発活動を、1993年の設立当初は幅広い年齢層の個人に対して行ってきたが、徐々に学校や地域、企業や自治体に向かっていったという。10年前にACCSが行った提言もベクトルはまったく同じだ。そして、今こそこの提言が生きるのではないか。今後は、ほかの自治体への波及を図りたい。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。