情報システムは、使いやすいに越したことはない。どんなに秀逸な機能を実装していても、現場のユーザーに使ってもらえなければ意味がないし、操作性の悪さは現場の生産性を下げる要因にもなってしまうからだ。とはいえ、使いやすさをアピールするのは難しいし、ユーザー側が使いやすさを要件とするのも一般的ではない。こうした常識をよそに、オーイーシーの加藤健代表取締役社長は、自社パッケージ製品が好調な理由を「使いやすさにある」と説明する。それも、公共向け市場で支持を得ているという。(取材・文/畔上文昭)
Company Data
会社名 オーイーシー(OEC)
所在地 大分県大分市
設立 1966年4月
社員数 340人
事業概要 公共ソリューション、ライフソリューション、民間ソリューションなど
URL:http://www.oec.co.jp/
大分初の電算化が起源
加藤 健
代表取締役社長
大分市に本社を置くオーイーシーは、複数の地元大手企業の出資により、「大分電子計算センター」として1966年に設立。汎用機を活用し、出資企業の給与計算や生産管理などのシステムを構築。県内における電算化時代の幕開けを担った。
現在では、電算化時代とはビジネスが様変わりしている。「オープン化が進むにつれて、株主はシステムを社内で抱えるようになった。そのため、株主の仕事はほとんど請け負っていない」と、加藤社長は説明する。変わってビジネスの柱となったのは、自治体向け。売り上げの約8割を占めるという。近年はマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)への対応が、同社の業績に貢献している。
平成の大合併で方向転換
大分県では、平成の大合併以前に58団体の自治体があった。オーイーシーは当時、30団体に基幹系システムのパッケージ製品を導入。県内のトップベンダーであったが、その後に合併が進み、県内の自治体は18団体にまで減ってしまう。
そうしたなかで、自治体数の減少に対応するため、オーイーシーは競合相手である富士通九州システムズなどとの共同出資により、2004年にオルゴを設立。全国の自治体でシステムの共同利用化が進んでいることに対応するべく、共同利用アウトソーシングセンターとしての役割を担っている。大分県では、18団体のうち、13団体が共同利用のシステムを採用している。
また、オーイーシーは自治体向けのパッケージ製品の全国展開に着手。公共施設予約システムをはじめとするパッケージ製品が、県内の自治体で採用され始めているという。加藤社長は、「自治体では、価格が重要なポイントとなるが、それだけではない。いいものは評価され、採用してもらえる。当社のパッケージ製品は、使いやすいのが強み」と採用される理由を語るが、使いやすさをアピールするのは簡単ではない。「ユーザーの要望をしっかり取り入れて、使いやすさを追求し、改良してきた。確かに、使いやすいとアピールするのは簡単ではないが、導入すると、現場からの問い合わせが少ない、運用の手間がかからないというところを実感してもらえる」と、加藤社長は使いやすさに自信をもっている。
オーイーシーは現在、受託開発をほとんど手がけていない。その理由について、加藤社長は次のように説明する。「パッケージを導入したほうが安く済むし、ユーザーもパッケージの採用を望んでいる。受託開発での提案力で戦うのではなく、パッケージ製品の戦いになっている」。そこでは使いやすさが武器になるというわけだ。
人口減社会に向けAIを活用
今後の注力分野の一つとして、加藤社長はAI(人工知能)を挙げる。「例えば、施設予約システムでは、住民の問い合わせに対し、チャットボットで自動応答するというAIの活用が考えられる。これまでのノウハウが応用できるし、データも保有している。現場の人員不足という課題を解消できるため、ビジネスチャンスは大きいのではないか」。
オーイーシーではビジネスの大半が自治体向けだが、医療系や文教系においても多くの実績がある。AI活用は、そうした分野に加え、さらに広くさまざまな業界に展開していく考えだ。「最近では、金融機関や地元メディアなど、当社の株主からAIに関する問い合わせをいただいている。AIを活用しないと、人口減社会において、会社がもたないという危機感がある」とのこと。こうしたニーズに応えるために、オーイーシーではロボットも含め、AIに取り組んでいく考えである。