森友学園問題が、またぶり返した今国会。本来議論されるはずだった法案がどんどん後回しにされるというおなじみの光景が繰り返されている。ただし、今回は新たに明らかになった事実の深刻さがこれまでとは段違いであるのも確かだ。
財務省が公文書を決裁後に書き換えていたことは、大きな衝撃だ。政治家や識者、そして多くのメディアが、イデオロギー的立ち位置や利害関係にもとづいた(としか思えない)過剰なポジショントークを応酬するのはいつものことだが、再発防止のための仕組みとシステムをどう構築するかについては、真剣に議論してほしいと切に願う。
例えば、野口悠紀雄・早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問は、ダイヤモンド・オンライン3月15日掲載の連載寄稿記事で、「森友問題の公文書改ざんはブロックチェーン技術で防げる」との見方を示している。国会でも今回の問題を受けて、日本維新の会の浅田均参院議員から麻生太郎財務大臣に対して、「公文書管理にブロックチェーンを活用するつもりはないのか」という質問が飛んだ。ただし、麻生大臣には質問の趣旨がよく伝わらなかったようで、答弁は「ブロックチェーンのイノベーションが日本の産業界に大きなインパクトを与える可能性に期待している」という内容にとどまった。
それはともかく、ブロックチェーンの耐改ざん性を生かすユースケースとして、公文書の管理はかなり以前から有望視されてきた。ドバイ政府は、2020年までに政府のすべての公文書をブロックチェーン上で管理する方針を明らかにしている。国内の地方公共団体でも、石川県加賀市が「ブロックチェーン都市宣言」をしたばかりだ。ブロックチェーンを中核技術として電子行政の基盤を整備するとともに、新たな地域経済圏の創出も目指すという。大胆な意思決定をした同市が、このチャレンジから何を得るのか注視したい。
ブロックチェーンに限った話ではないが、性善説に依らず、テクノロジーで行政手続きの適正さを担保できるような仕組みを検討するのは、理に適っている。問題は日本政府におけるこの種の議論で一体誰が旗振り役になれるかだ。議員の皆さんには、日頃の勉強会の成果をいまこそ発揮していただきたい。
週刊BCN 編集長 本多和幸
略歴
本多 和幸(ほんだ かずゆき)

1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、13年、BCN入社。業務アプリケーション領域を中心に担当。18年1月より現職。