パスポートを更新した。旅券番号が変わってしまうので、正確には切り替え発給というべきか。10年前、新規にパスポートを取得したのは、親しい友人が海外で挙げた結婚式に参加するためだった。つき合いの長い友人何人かと一緒に行った、楽しい旅だった。当時を思い出して少し感傷に浸ってみたりしたが、発給された真新しいパスポートを目にすると、自分の顔写真の緩んだ顎に10年という時間の長さを突きつけられる。
それにしても、である。切り替え発給であれば手続きは簡単だと考えていたのだが、いや、実際にそれほど難しくはなかったが、思ったよりも面倒だったというのが率直な感想だ。都心のパスポートセンターは、有楽町、新宿、池袋の3か所で、申請窓口が空いているのは平日のみ(受け取りは日曜日も可)。オフィスから一番近い有楽町を選んで出向いたが、これがなかなか混雑している。係員の方が、「新宿と池袋は空いているので、そちらで申請していただいたほうがスムーズだったかも」と助言してくれる始末だ。有楽町はJR有楽町駅から近いが、新宿は都庁、池袋もサンシャインシティ内にあり、アクセスが良好とは言い難い。都心のオフィスの分布を考えれば、山手線の東側か南側の駅にもう一か所くらいパスポートセンターがあってもいいのではと、ない物ねだりしながら順番待ちをした。
受け取りは申請に比べればスムーズだったが、手数料の支払いは現金のみで、旅券引換書に収入印紙・証紙を貼って提出しなければならないという余分に思えるプロセスが存在する。重要な身分証でもあるパスポートの申請にかかる費用の支払いでは、むしろ現金よりも透明性の高い支払い手段として電子決済を歓迎すべきではないか。印紙の貼付に至っては、受付側が手数料管理をしやすくするためのものでしかない。テクノロジーをうまく使って住民側、行政側とも楽になるシステムをつくることが、そう難しいとは思えない。
日本経済新聞によれば昨年12月、安倍首相はパスポートの発給申請をウェブ上で完結できるようにする方針を表明したという。早ければ18年秋の臨時国会に関連法令の改正案を提出し、システム整備も進めるということだが、受け取りのプロセスまで含めて真に利用者の利便性に貢献する仕組みを目指してほしい。
週刊BCN 編集長 本多和幸
略歴
本多 和幸(ほんだ かずゆき)

1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、13年、BCN入社。業務アプリケーション領域を中心に担当。18年1月より現職。