パーシモンシステム(大阪市中央区)は、富士通のオフコン販売を手がけていた旧エルムにルーツをもつソフト開発ベンダーである。旧エルムが旧ウッドランドなどを経て、フューチャーグループのFutureOneに統合・再編していくなかで、業務アプリケーションソフトの高速開発ツールなどの営業権をもって2010年に独立したのが、パーシモンシステムだ。ビジネスの主力は高速開発ツールの販売であるが、顧客企業の要望に応じて同ツールを活用したシステム構築支援も行っている。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 パーシモンシステム
所在地 大阪市中央区南船場
設立 2010年10月
資本金 400万円
従業員数 5人
事業概要 30年余りの実績を誇る高速開発ツール販売、ならびに同ツールを使ったシステム構築の支援を手がけている。三宅広行代表取締役は日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)理事の一人として関西支部を支えている
URL:https://www.persimmon-system.co.jp/
業務アプリの肝は「操作性のよさ」
三宅広行 代表取締役
代表取締役の三宅広行氏は、1981年に新卒で旧エルムに入社。87年にアプリケーション画面開発ツールの「iii(トリプル・アイ)」の開発に参画。以降、マイクロソフトのMS-DOS版、IBMのOS/2版、そして現在のWindows版と主にオープン系のプラットフォームに対応した業務アプリケーションソフトの高速開発ツールのビジネスに従事してきた。
業務アプリ開発における三宅代表取締役のこだわりは「操作性」のよさ。「どんな業務アプリでも、操作性が悪ければ、ユーザーの満足度は得られないし、業務効率も上がらない」というのが持論。使いやすさのポイントは、「入力したデータに間違いや漏れがないか確認する工程に顕著に表れる」と話す。
入力が複数ページ(複数画面)にわたるときは、必ず戻って確認できるようにしたり、こうした業務アプリ特有の画面制御がウェブアプリでは難しい場合は、Windowsのネイティブアプリで開発できるツールも用意している。
同社のデータベース設計から画面制御まで業務アプリが必要とする機能を網羅した「LLL(トリプル・エル)」シリーズでは、Windowsアプリ向けの業務アプリを開発する.NETフレームワーク対応版の「LLL/.net」と、ウェブアプリ対応版の「LLL/Ajax」の2種類を用意。ウェブアプリが多くなった近年でも、「業務用途ではデスクトップパソコンとWindowsのネイティブアプリの操作性のよさは、依然として価値が高い」(三宅代表取締役)と、業務での操作性を重視している。
意外なニーズは常に存在する
MS-DOS時代から30年の実績がある画面開発ツール「iii」シリーズと、本格的な高速開発ツールである「LLL」シリーズは、高速開発ツールの草分け的存在だ。
かつて、こんな逸話があった。業界が長い人は記憶にあるかもしれないが、MS-DOSはアプリケーション内でのコピー&ペースト(コピペ)はできたが、アプリをまたいでのコピペは基本的にできなかった。Windows時代になってこうした制約が取り除かれたため、Windows版のiii/LLLシリーズにも反映させた。しかし、ある金融業のユーザーから「情報漏えいの危険があるためアプリ外へのコピペができるのは困る」とクレームがついた。
三宅代表取締役は、「Windows版へ移行するとき、強化されたコピペ機能を、よかれと思って取り入れた」が、業務の現場では「余計なお世話」だったわけだ。アプリ外へのコピペの可否を選択できるようにすることで、この金融業ユーザーの要求に応えた。この件があってからは、新機能の実装時は、できる限りユーザーからていねいにニーズを聞き取り、業務アプリならではの要求を高速開発ツールに反映するように心がけている。
個別SIで競争優位性を実現へ
ユーザーが同社の高速開発ツールを使うパターンは、「ソフト開発の生産性を向上させる」あるいは、「今すぐほしい業務ソフトを、できるだけ早く開発したい」の大きく二つ。両者は似て非なるもので、とくに後者は、「ライバル会社に勝ちたい一心で、かなり切羽詰まっている状態」であることが多い。既存のパッケージソフトを使うのが手っ取り早いが、それでは個社の特性を反映しずらく、ライバル会社もそのソフトを使っていたら競争に埋没しかねない。
「今すぐつくってほしい」と要望がきて、開発の規模が大きくなったときは、三宅代表取締役が理事を務める業界団体の日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)のSIer各社に協力を仰ぐことがあるという。いくらパッケージやSaaSが便利になったからといっても、「ビジネス上でどうしても差異化を図らなければならないところは、個別のSIは必ず残る」(三宅代表取締役)とみる。そのための高速開発ツールとして、今後も機能拡充を進めていく。