少し心配になる製品発表があった。富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が「国内初の子ども専用ノートPC」と銘打って発表したLIFEBOOKブランドの新製品は、SNS上では否定的な声が圧倒的だった。想定価格はクラムシェルノートタイプが7万円強、タッチ対応の2in1タイプが9万円強で、OSはWindows 10 Home、CPUがインテル Celeron 3865U、メモリは4GBで増設不可、ストレージはSSDで128GB。小学生が主なユーザー対象で、ハードな使用にも耐え得る設計・構造にしているほか、保護者が安心して子どもに使わせられるように各種管理・制限機能を充実させているという。また、遊び感覚でプログラミングを学ぶことができる教材ソフトやマニュアルをバンドルし、使った後にきちんと片付ける意識を育むべく、「お道具箱」をイメージしたキャリーケースも付属しているというからふるっている。
批判として多かったのは、単純にノートPCとしてみた場合に価格とスペックが釣り合っておらず、付加価値として謳われている要素についても、文字通り“子どもだまし”だという声だ。ただし、この製品がITリテラシーの高い親をもつ子どもをターゲットにはしていないのも事実。FCCLはIT活用の裾野を広げていくための商材として市場投入したのだ。その点を考慮しなければフェアな評価は下せまい。
と擁護派らしいことをいってみたが、やはり疑問は拭えない。少なくともこの製品が提供すべきユーザーエクスペリエンス(UX)として、ユーザーである子どもたちがITの可能性の大きさをきちんと感じられるようにすることは必須だと思うが、この製品にそれが可能なのだろうか。「PCってなんか使えない」と思われてしまっては元も子もない。
2020年に「Windows 7」「Office 2010」がサポート期限を迎え、それまではPCの需要増は続くとみられる。しかし、その後に反動が来るのは間違いない。中国レノボグループの傘下になったものの、従来のブランドと国内生産拠点を維持しているFCCLやNECパーソナルコンピュータが、そのままでいられる保証はない。自らのブランドの確固たる存在価値を市場にどう示すのか。従来のビジネスの延長線上で考えているだけでは苦しい。
週刊BCN 編集長 本多和幸
略歴

本多 和幸(ほんだ かずゆき)
1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、2013年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。2018年1月より現職。