日本情報技術取引所(JIET)東京支部の会員数は約480社。JIET全体の約60%を占める最大規模の支部である。そのため、毎月の商談会に加え、研修会や他団体との合同企画など、活動の実施回数を増やすことにより、会員満足度の向上に努めている。また、多くの会員企業がシステム開発案件よりもエンジニアを必要としていることから、「新卒採用部会」を立ち上げ、合同の求人活動を実施。学校訪問活動や企業見学会、インターンシップといった地道な活動により、採用者数が年々増えてきている。(取材・文/畔上文昭)
商談会を毎月実施
東京支部
海老原裕一
支部長
JIETは“取引所”という団体の名称にある通り、各支部では活動の中心を、会員企業がシステム開発案件を紹介しあう商談会においている。その開催ペースは、四半期に一度としている支部が多いなか、東京支部は毎月。「東京支部の会員数が約480社。JIET全体の60%ほどを占める規模になるため、四半期に一度ではなく、毎月実施し、より多くの会員が参加できるようにしている」と、東京支部の海老原裕一支部長は毎月開催の背景を説明する。
商談会は、基本的に東京支部の会員向けに実施しているが、8月のみ「首都圏合同商談会」として、神奈川支部と埼玉支部、千葉支部と合同で実施。各支部との交流の場となっている。
JIETは他団体との交流に注力していることから、東京支部が先導して、他団体との合同商談会も実施。参加団体は、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)、全国ソフトウェア協同組合連合会(JASPA)、IT検証産業協会(IVIA)。2018年は、さらに千葉県情報サービス産業協会(CHISA)が参加を予定している。
また、20人規模の小集団活動として、JIETの事務所を使用し、2か月に1回のペースで「研究&ミニ商談会」を実施。「エンジニアが会社に定着するには」「採用したエンジニアをいかに教育するか」など、経営寄りのテーマを設定し、意見交換などを行い、その後に商談会を実施している。
さらに「新ビジネス創出部会」により、人工知能やブロックチェーンなど、新たなビジネス展開を想定した勉強会も開催している。このほか、エンジニア向けには、JavaやC#、Pythonといったプログラミング言語を学ぶ機会も提供。初心者向けから、中級者や上級者を対象にしたレベル別に実施している。「みんなでアイデアを出し合いながら、会員にメリットのある活動を推進していきたい」と海老原支部長。商談会にこだわらず、さまざまな活動を推進している。
学校訪問などで会員企業の新卒採用を支援
会員の新卒採用活動を支援
東京支部の活動で特徴的なのが、15年に始めた新卒採用部会による会員企業の採用活動の支援。JIETの活動の中心は商談会にあるが、会員企業の多くはシステム開発案件よりも、エンジニアを必要としている。そのため、活動が商談会というだけでは、会員の満足度は上がらない。東京支部が会員の採用活動を支援するのは、こうした背景があるからだ。
新卒採用部会では、新卒採用を希望する会員と一緒に学校に出向き、企業説明会や就職・採用懇談会を開催。このほか、インターンシップや企業見学会などを実施し、新卒採用を支援している。
採用にあたっては、試験を合同で実施。学生は1回の試験で複数社にエントリーできる。地道な活動だが、16年度は8社で22名を採用、17年は10社27名の採用に至った。
「JIETの会員には小規模な企業が多く、新卒の採用に課題を抱えている。1社では学校へ行ってアピールするのは難しいが、JIETがまとめることで、そうした機会を得ることができる。また、共同求人活動に参加を希望する会員に対し、社労士が就業規則などをチェックしており、いわゆるブラック企業ではないことを学生に対してJIETが明示する。そのため、学生も安心感をもって応募できる。3年かけて、少しずつ開拓してきた。成果は出ている」と海老原支部長。17年は20数社が参加し、50校以上に訪問。参加する会員は年々増えている。
少子化が進む今後は、さらに新卒の採用が厳しくなると予想される。東京支部では、新卒採用部会の活動を継続して実施していく考えだ。