ユーザー同士がQ&Aで問題を解決する、ナレッジインテリジェンス事業を展開するオウケイウエイブのビジネスが、あらためて市場の注目を集めている。
その要因の一つに、マレーシアに設立した現地子会社で、仮想通貨の金融コンサルティングを行う「OKfinc LTD.」がある。問題解決を求める質問者に、返答してくれる回答者へのお礼として、ビットコインを贈るためのブロックチェーン技術がここで役立つのだ。
ところで、同社のナレッジインテリジェンス事業での質問者数は現在820万件、回答者数が2800万件、お礼のありがとう件数が4700万件である。こうなると、もうどんな悩みごと、相談ごとにも対応できる。どんな質問が多いかと聞くと、第一位が「病気・健康・ヘルスケア」、第二位が「心の悩み」、第三位が「人間関係」となる。
しかし、同社で一番稼いでいるのは、企業向けサービスのエンタープライズソリューション事業である。これは、銀行やメーカー、携帯電話会社などになり代ってユーザーからの質問に答えるものである。今では一部の役所もユーザーに入っている。
「携帯電話を解約したい」「PCが故障した」「主人が亡くなったので銀行口座を処理したい」――。質問と回答のプロであるオウケイウエイブのノウハウは生きる。
多くの顧客からの質問に、電話や窓口対応で多大なのコストがかかっていた銀行やメーカーは経費が節減できる。直接話をしたくない顧客は、PCやスマートフォンでほとんどを解決できるので、まさに三方一両得である。
このビジネスモデルはさらに進化を遂げる。それは、ナレッジインテリジェンス事業とエンタープライズソリューション事業の相互乗り入れである。例えば、同社のユーザーであるプリンターメーカーの3社がチームを組み、故障などの質問に答える事業である。しかし、やってみると分かるが、機器が高度化してメーカーの担当社員が答えられないケースも多い。
ここで登場するのがプリンター機器の街の専門家、いわゆるオタクだ。彼らは多くがメーカーの技術者よりもはるかに詳しい。同社ではこのような街や企業の専門家を3000人揃える。今後この手法は、携帯電話、PCから工作機械まで幅広く広がるものと思われる。
アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴

増田 辰弘(ますだ たつひろ)
1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。2001年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。