ビッツは、多様な業種との協業を急ピッチで進めている。自転車レンタルから空港の手荷物管理に至るまで、新しい協業先を意欲的に増やしていくことで、SIビジネスの幅を広げるのが狙いだ。同社は、組み込みソフト開発に強いSIerで、これまでは大手電機メーカーなどの協力会社としてビジネスに参画するケースが多かった。近年ではこうした従来型のビジネスに加えて、ITを切り口とした異業種との協業、新商材の立ち上げに注力。新規ビジネス領域の開拓につなげている。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 ビッツ
所在地 東京都品川区
設立 1971年7月
資本金 1億円
従業員数 約250人
事業内容 昨年度の売上高は約26億円。組み込みソフト関連が約4割、社会インフラ関連が約6割を占める。創業50周年にあたる2021年には年商30億円、従業員数300人に増やすことを目標に掲げている。組込みシステム技術協会(JASA)会員企業で、加賀谷龍一社長は副会長を務めている。
URL:https://www.bits.co.jp/
新規ビジネスを積極的に立ち上げ
ビッツの売上構成比は、組み込みソフト関連が約4割、社会インフラ関連が約6割を占める。社会インフラでは、例えば、道路交通で使う信号機の制御、航空・宇宙分野では人工衛星の制御などを得意とする。
社会インフラビジネスの特性から、「取引先の約8割が大規模企業が占めている」(加賀谷龍一社長)と、大手電機メーカーなどが主要な顧客の上位を占める。今年で創業47年になる同社が、長年培ってきた技術と信頼によって勝ち取ってきた優良顧客である。しかし、今後のSIビジネスをより伸ばしていくには、「既存ビジネスだけに依存していては勝ち残れない」との危機感もある。
そこで、近年ではITを切り口とした協業先の開拓に、とりわけ力を入れている。同社が強みとする組み込みソフトや社会インフラ系の技術を生かしつつ、あらゆる業種・業界と協業の可能性を追求するというものだ。
まずは、所属団体である組込みシステム技術協会(JASA)主催の展示会「組込み総合技術展/IoT総合技術展」への出展などを通じて、「日頃の営業活動では出会えないような会社と出会い、協業していく」(片桐博文・執行役員営業本部長)ことを推進。“協業を前提としたおつきあい”を実践したことにより、直近で24社の新規協業先、取引先を獲得してきた。こうした活動を通じて、案件や新商材の開発を実現するケースも徐々に出はじめている。
一例として、自転車メーカー「tokyobike(トーキョーバイク)」と協業して開発した「クラウド型自転車レンタルシステム」がある。観光地などで簡単にレンタル自転車サービスを提供できるようにした予約受付システムで、tokyobike直営の自転車レンタルショップのノウハウをシステム化したものだ。
tokyobikeの自転車は現代風のおしゃれなデザイン。海外観光客向けにも対応できる外国語対応、各種決済サービスとの連携機能を実装している。観光地の景観保護に役立つとあって「全国から引き合いが多数来ている」(片桐本部長)と、両社協業の成果に手応えを感じている。
左から原田篤取締役、加賀谷龍一社長、片桐博文執行役員
異業種と組んでニーズを引き出す
ほかにも、空港の手荷物用ベルトコンベアーを製造する装置メーカーと組んで、問題が起こりそうな荷物を識別するシステムを開発。画像認識技術を使い、ほどけそうになっている荷物や、バックパックなど他の荷物やベルトコンベアーにひっかかりやすい荷物を検出。荷物の中身が飛び出たり、引っかかって破損するといったトラブルを事前に察知して、予防できるよう支援するものだ。「工場の生産ラインで不良品を見つける要領を応用したアイデア商材」(原田篤・取締役システム事業統括)である。
空港で使う手荷物運搬用の装置やシステムは、すでに成熟した市場である。だが、「アイデア次第で付加価値を高めたり、トラブルを未然に防止できたりと、市場を少しずつ広げていくことは十分に可能」(原田取締役)と話す。
ビッツのような純粋なITベンダーが、見ず知らずの業種・業態に単独で食い込んでいくのはハードルが高い。しかし、レンタル自転車ならレンタル自転車、空港の荷物運搬なら荷物運搬に精通した会社と協業することで、エンドユーザーが抱えている課題をより的確に捉えられるようになる。
加賀谷社長は、「中長期的にみると、就労人口の減少で、優れた人材の獲得競争はより熾烈になる」と危惧している。そうした状況だからこそ、常に何かおもしろそうなことをやっている会社だと思ってもらうことは「人材獲得で有利に働く」とみている。いつも新しいことに挑戦する姿勢は、「おもしろいことをやってみたいと考える人を惹きつける」からだ。一つでも多くの新規事業を軌道に乗せられれば、それが「持続的な成長につながっていく」と考えている。