「少年少女発明クラブ」をご存じだろうか。公益社団法人発明協会のウェブによると、協会の事業として全国47都道府県に214カ所のクラブがあり、ボランティアの指導員たちが子どもの創造活動を支えている。
昨今、知財教育を推進する立場で、この発明クラブとの連携を模索しようという試みがある。先日は、内閣府知的財産戦略本部の事務局長や参事官と一緒に東京都台東区の少年少女発明クラブを視察してきた。
発明クラブは課外活動として行われているが、学校教育の中でも、もの作り教育=「創造教育」に対する関心は高まっている。私が特命教授を務める山口大学でも、3月に地元のクラブを視察し、指導員からプログラミング教育への支援を望む声があった。
2020年から小学校で必須化されるプログラミング教育によって、将来、ソフトウェア技術者を十分に確保できるとの見方があるようだが、教育を受けた小学生が、それを望むかどうかは分からない。将来にわたって優秀な人材を確保したいとするならば、ソフト業界自身が魅力を持ち続ける努力も必要だろう。
ところで、将来就きたい職業としてYouTuberを挙げる小学生が増えている、との報道がある。ゲームクリエイターは男子小学生に人気のある職業だ。YouTuberもゲームクリエイターもプログラマーも創作者という点で共通している。
だとすれば、「創造教育」にとどまらず、YouTuberやゲームクリエイターにも通じる子どもが面白いと思えるようなプログラミング教育を、「創造・創作教育」としてソフト業界自身も考える必要があるのではないか。
そう考えると、創造・創作教育において、著作権教育は前提としてあって然るべきだ。YouTuberが作る動画コンテンツも、ゲームクリエイターが開発するゲームソフトも、プログラマーが作成するソフトも、全て開発時点で著作権が発生し、開発者が権利者となる。だから職業として成立する。著作権を侵害しないために、といった理由ではなく、将来なりたい職業として生きる糧を得るための知識として表現教育の一環として著作権を捉えてほしい。
これが、プログラミング教育の必須化に際してソフト業界が子どもに伝えるべき第一歩ではないだろうか。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。