高いところにやたらと物を置く癖は、悪癖として早めに直したほうがいいと痛感した。洗面化粧台の鏡の上に置いていた小瓶が落下し、洗面ボウルが割れ、穴が空いてしまった。
多くの洗面化粧台と同じように、我が家のものも洗面ボウルが一体型のものであったので、洗面化粧台をそっくり買い直すしか選択肢がない。そういえば洗面台横に置いてある洗濯機も寿命を迎えつつある。痛い出費だが、ここは合わせて買い替えるという決断をした。
洗面台、洗濯機とも、大きくて重い。できれば製品を販売しているだけでなく、設置まで含めてカバーしてくれるサービスを提供している事業者から買いたい。ということで、某大手家電量販店で両方を購入し、簡単な工事を含む設置までをお願いした。ちなみに家電量販店は近年、リフォームビジネスがかなりの勢いで成長し、今後も拡大が予想されているという。
少々残念だったのは、両方とも家電量販店は単なる窓口機能しか持っていないからなのか、洗面台の設置工事と洗濯機の設置を「一つのプロジェクト」としてオーダーすることはできなかったことだ。我が家の洗面所の構造上、洗面台、洗濯機の順番でなければ設置できない。そうした事情もあるので、同じタイミングで設置ができるよう、家電量販店側が調整してくれるとありがたかったのだが、「別の業務フローで動いているので、それはお客様ご自身でお願いします」とのこと。外注している業務も多く、事業間に横ぐしを通したUXを実現するというのはなかなか難しいのだろう。業態を拡大していくごとにこうしたサイロがどんどん増えていくというのは、まさに情報システムの課題そのものだ。
経済産業省が9月に発表した、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会の報告書「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」ではこの課題の深刻さを指摘している。既存システムが事業部門ごとに構築されて全社横断的なデータ活用ができないなどの課題を放置してDXが実現できない企業が多数派になると、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるという。これを2025年の崖と名付けた。ただし、洗面化粧台が壊れた不慮の事故?と違い、2025年の崖というリスクは既に顕在化し、今ならまだ対策できる。ITベンダーにはその危機感をユーザーと共有する努力が不可欠だ。
週刊BCN 編集長 本多和幸
略歴

本多 和幸(ほんだ かずゆき)
1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、2013年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。2018年1月より現職。