2025年の万博が大阪に決まった。1964年に開催された東京五輪は56年後に、70年に行われた大阪万博は55年後に、それぞれ開催されることとなった。
東京五輪後をどうするのか?という題目が延長された気分だ。IR法案の成立もあり、新たなテクノロジーを使った、さまざまな取り組みが加速していくことになるだろう。25年開催なので40年くらいを見据えた世界観を打ち出すことになる。
45年といわれるシンギュラリティの時代、つまりコンピューターの能力が人間を越えるとされる時代を設定する必要がある。ロボティクス、AI、AR、VR、MRに加え五感の伝達や再現を含めて、これまでの延長線上ではない新しい価値観や常識を持ち込んで、「いのち輝く未来社会のデザイン」を最新技術を使って示すことになる。
現在の延長線上にはない価値観や世界観を示すために必要なのは、発想力だけではなく構想力だ。今の延長線上から発想すると、どうしても目の前の壁や課題を見据えた上で進むべき道を探りたくなる。
しかしそれでは、世界に向けて未来社会のデザインを打ち出すことはできない。40年という新しい世界をまずは想像し、そこから逆算した上でこれからのロードマップを作る、いわゆるバックキャスティングで未来を構想しなくてはならない。
例えば、すでに「バーチャル展示場で開催も!」という噂もちらほら上っている。確かに今を起点に考えると、25年はVRが普及していることになるだろうが、それは25年のリアルであって、40年を体感することにはならない。40年に普及する未来の一部を体験してもらうツールとして活用することにフォーカスを当ててほしいと思う。
40年には、今あるデバイスが全く違うものになっているだろう。だから25年時点のテクノロジーで、デバイスをプロトタイプしても意味がない。これらのテクノロジーによって、40年に実現されることが「時間と距離が障害にならない世界」だとすると、その上に未来社会はどう展開され、社会が抱える課題をどう解決していくのか。
IT企業は、自社のテクノロジーが25年には何を提供できるかという視点で考えてしまいがちだが、もう一歩踏み込んで、未来を提唱してほしいものだ。
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
略歴

渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。