あけましておめでとうございます。
私たちの目前には、2020年の東京五輪、そしてWindows系各種OSのEOS需要、19年の改元や消費税改正といったビッグイベントが迫っている。法人向けIT市場では、AI、IoTなどを活用した“儲ける”ためのIT投資である、いわゆる「デジタルビジネス」が、市場のパイそのものを押し広げている。ITベンダーの事業環境は良好だ。
一方でさまざまな現場における人手不足の深刻さを耳にする。開発現場への負荷も高まっているし、新しいデジタルソリューションを顧客に提案する人材をいかに確保するか、多くのベンダーが頭を悩ませている。16年にバズワード的に一気に盛り上がり、もはやメディアで頻繁に聞くことがなくなった「働き方改革」だが、IT産業を見渡してもその重要性は増すばかりだ。
さらに、イベント特需の後には反動が付き物であり、「ポスト2020」の事業戦略を練っておくことも場合によっては必要だろう。事業環境が現在良好でも、法人向けIT市場の未来がバラ色であると、無条件に保証されているわけではない。
市場をけん引する大手ベンダーに目を向けると、国産勢は苦闘が続いている。AWSやマイクロソフトなどクラウドでトップを争う外資系ベンダーがプラットフォーマーとしてパートナーエコシステム構築に大きな力を注ぎ、巨大なビジネス規模になったにもかかわらず高い成長率を維持しているのとは対照的だ。国産勢にも、彼らがプラットフォーマーとして成長できていた時代は、それを支えてきたパートナーエコシステムがあったわけだが、残念ながらその資産は老朽化し、デジタル変革のニーズに応えられるものではなくなっている。だからこそ、まずはプラットフォーマーとしてのビジネスの核になり得る自社技術を自社SIで活用する垂直統合モデルでその価値を証明しようとしているわけだ。しかし、その後に新たなパートナーエコシステム構築に着手したとして、果たして市場はその動きを悠長に待っていてくれるだろうか。いまだにプラットフォーマーの座に執着をみせる国産勢が反転攻勢するためのシナリオは難易度が相当に高い。
各ベンダーがパートナーエコシステムの在り方をどう考えるかが、IT市場のトレンドを大きく左右する。19年も週刊BCNは長年追い続けてきたこの領域をしっかり取材していきますので、引き続きご愛読ください。
週刊BCN 編集長 本多 和幸
略歴

本多 和幸(ほんだ かずゆき)
1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、2013年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。2018年1月より現職。