私の所属するコンピュータソフトウェア著作権協会の会員である産業能率大学は、地域と連携した活動や、企業とのコラボレーション活動を積極的に行っている。学内にはコンテンツの制作やビジネスに関するさまざまな実践や研究を行う「コンテンツビジネス研究所」が設置され、協会からは客員研究員として職員を派遣し、著作権教育の観点で協力している。コンテンツビジネスの基盤になる権利は著作権である。学生が制作するさまざまなコンテンツを育み守るためには、著作権の知識が不可欠であるからだ。
このコンテンツビジネス研究所では年に1度、学生を対象とした作品コンテスト行い、優秀作品の選考と講評、コンテンツ制作の際に押さえるべきポイントを解説する公開講座を開催している。協会の職員は学生に、制作時に気をつけるべき著作権のポイントと法改正の最新情報を解説している。
コンテストには映像・写真・イラスト・ゲームや先端表現などさまざまな作品が寄せられ、映像作品では地域で活動するNPO法人の紹介をはじめ、地域のイベントや観光地の魅力を伝える作品が目を引く。ほかの部門でも、地域振興に結びつくコンテンツが多い。
地域と連携したコンテンツづくりは、学生にとっては制作能力が向上するという点だけでなく、象牙の塔から社会に飛び出し、地元の人たちからの聴き取りを通じて地域を理解する、またとない機会となる。一方、学生から質問される側にとっては、自分たちが居住する街の魅力を見出し、魅力あるコンテンツにまとめて広く告知してもらえるという意味で、ともにメリットのある活動となっている。
例えば、ある教授のゼミの学生たちは、地元の神奈川県伊勢原市と連携してシティプロモーション動画を制作した。動画はユーチューブの伊勢原市公式チャンネルで公開されている。地域や企業との連携はPRにとどまらない。学生たちは街づくり、企業再生、イベントにも協力するなど、活動内容は実にさまざまだ。
ただし、学生に活躍の機会を提供し、あるいは技術を伝達するには企業や社会人との連携が不可欠だ。協会は著作権教育を通じて産学連携の地域振興活動に関与していくと同時に、地元の人たちに対しては、学生と連携する機会があればぜひ協力していただきたいと願っている。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。