石川県輪島市で2月12日から17日まで「自動走行カートでみらいの街歩きを体感!!」というイベントが開催された。輪島市スマートEカート技術実証の一つで、自動走行を活用した新しい交通システムの整備を実証しようというものだ。初日に体験してきたので、感想と今後の期待についてお伝えしたい。
輪島市の電動カートによる実験は歴史がある。2014年11月に軽ナンバーを付けた電動カートによる日本で初の公道での調査走行がスタートしている。ゴルフ場ではすでにお馴染みの自動運転による電動カートだが、公道を走るためにウインカーやバックミラーなどの保安基準を満たす改造が行われている。時速20㎞以下の低速走行車のため、シートベルトを締める必要はない。
15年に年間運行が始まり、16年11月からは道路に埋設された誘導線をたどって進む自動走行実験も始まっている。今回はその自動運転による電動カートの街歩きへの展開を考えた実験であった。
実際に乗ってみると、時速10kmは街並みを見ながらの移動にはちょうどよい。輪島の観光スポットが集積しているエリアなので、一周しても20分程度だ。私は一周してから、それぞれのスポットで降りて観光を楽しんだ。
地元の方に話を聞いてみると、電動カートは当初、交通の妨げになるとか、事故が起きないか不安視されたが、今では見慣れてしまい違和感は無くなったとのこと。ただ、乗っていると注目されるので地元の人は乗りにくいという声もあった。
この移動手段は観光客の移動だけでなく、高齢者の移動手段としても注目されている。免許を返納した高齢者が買い物に行ったり、病院に行ったりする際の足になることが想定されている。しかし、まだまだクリアすべき点も多い。誘導線のエリアにある駐車車両や車道を歩く観光客だ。そのたびに手動モードに切り替えて回避行動をとらなくてはならない。管制センターからの操縦だけではまだ難しいので、スタッフがハンドルを握らず運転席に同乗している。
イノベーションの普及の兆しは「見慣れてきた」の一言に尽きると感じた。走行頻度が増えて見慣れてくると、技術はそこになかった時のことを思い出せないくらいに普及するのであろう。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
略歴

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。