日本情報技術取引所(JIET)千葉支部には、会員に女性が比較的多い。2019年1月に千葉支部長に就任した柄崎有香氏も、その一人。千葉支部には女性が参加しやすい雰囲気があるという。そこで千葉支部は、会員企業が女性に働きやすい職場を提供できるように、相談窓口を設けるなどの支援を行っている。また、千葉県情報サービス産業協会(CHISA)と共同で、家族ぐるみで参加できるイベントも開催し、子育て世代を支援。こうした活動をJIET全体へと広げるべく、継続的に取り組んでいる。(取材・文/畔上文昭)
ミニ商談会で密な情報交換
千葉支部
柄崎有香
支部長
JIETは“取引所”としての機能を果たすべく、各支部で定期的に商談会を開催している。商談会は、ゲストを呼んでの講演会や勉強会を実施し、その後に開発案件のパートナーを募集する企業が登壇して、案件内容を説明するというのが一般的である。千葉支部も同様だが、より小規模な独自のミニ商談会も開催している。
「定例の商談会よりも小規模なため、参加者が対話形式でコミュニケーションできる。参加者の会社紹介や近況報告に始まるところも、アットホームな感じ。参加者からは話しやすいと好評で、年に3回ほど実施している」と、柄崎支部長はミニ商談会の様子を説明する。このミニ商談会でも案件紹介がメインだが、エンジニア不足への関心も高いという。
また、千葉支部では、CHISAとのコラボレーションに注力しており、商談会もその一つとして取り組んでいる。CHISAは大型案件を抱えている企業が多く、会員数も千葉支部の29社に対し、CHISAは115団体であるなど、千葉支部の商談会とは違った情報交換が期待できる。
CHISAとのコラボレーションは、商談会だけにとどまらない。これまでには会員向けサービスの一環として、CHISAとともにウォークラリーやフットサルなども開催した。
千葉支部主催のバーベキューパーティー。
イベントの多さが同支部の特徴で、大切な情報交換の場となっている
「ウォークラリーは、ルート上のポイントに置いたクイズを解いて歩くというもの。会場は海浜幕張で、想定以上に多くの人が集まって楽しいイベントになった。ウォークラリーの後にはバーベキューパーティーも用意。家族で参加できるため、いつもと違う交流の場になったと好評だった」と柄崎支部長。今後も新たなイベントを企画し、CHISAと一緒に千葉の情報産業を盛り上げていく考えである。
千葉支部は女性の会員が多い
IT業界では慢性的なエンジニア不足が続いている。JIETでは、商談会の定番ともいえる話題だ。一時は大手金融機関の大型開発が落ち着くまでと言われることもあったが、デジタルトランスフォーメーション(DX)に代表されるような新たな案件が発生するなど、エンジニア不足はまだまだ解消される見込みがない。むしろ人口減の影響から、ますます厳しい状況になることも予想される。
この課題を解消するべく、国策として働き方改革が進められており、それを追い風に多くの企業は多様な労働形態を受け入れるようになった。これが子育て世代の就労支援へとつながり、女性の雇用拡大に貢献すると期待される。また、千葉支部の会員企業は、県内の案件を抱えているケースが多く、自宅から近いオフィスで働きたいという子育て世代のニーズに応えられる。
こうした背景もあり、千葉支部では会員企業に女性の採用を進めている。中でも柄崎支部長が注力するのは、会員企業に対し、女性が働きやすい環境を整備する際の支援である。
「結婚や出産を機にシステム開発の現場を離れた優秀なエンジニアは多く、子育てが一段落したところで復帰を望んでいる。そのため、千葉支部では、会員企業に女性を採用するよう呼び掛けている。そのかいがあって、千葉支部の会員には頑張る女性が増えた。JIETの活動は参加しやすいとの声もいただいている。一方で、女性が働きやすい環境をどのように提供すべきかについては課題に感じる会員企業が少なくない。そこで千葉支部では、採用後の対応についての相談も受け付けている」とのこと。まさに採用からアフターフォローまでの手厚い支援だ。
柄崎支部長は、この取り組みを千葉支部に留めるのではなく、いずれはJIET全体の活動として展開できるように、しっかりとノウハウを蓄積していく考えである。