午前11時。竹芝桟橋から父島へ向けて、おがさわら丸が出港する。1週間に1回、本土と島を結ぶフェリーは24時間の船旅に出る。
竹芝桟橋は、竹芝CiPと呼ばれるデジタル産業を柱とした再開発地域として整備が進む竹芝エリアにある。新橋にあったソフトバンクの本社も竹芝への移転を発表するなど、ビジネスの現場として注目の場所だ。
東京都には数えきれないくらいの魅力があり、挙げればきりがないが、多くの島々を抱えることも、その一つ。そこで東京都の島々に行ったことがあるかと東京都民に聞いてみたのだが、あると答える人は極めて少なかった。多くの東京都民は、東京都にある11の島々のことを普段あまり意識していないのである。
ところが、竹芝に人の流れができると様相が変わってくる。歩いてすぐのところに、伊豆諸島や小笠原諸島に向かうフェリーや高速船が着き、船や港が身近な存在になる。全国でも稀有なシーフロントのビジネスタウンだ。
出港する船を見送ったり、竹芝桟橋で開催される諸島のイベントに参加したり、ランチで足を運んだりするなど、桟橋が身近な存在になると、ちょっと行ってみようかなという気になってくる。
「ねぇ、来週の週末、利島(としま)に行ってみない?」という会話がオフィスで生まれ、「伊豆七島を全部制覇したから、今度は父島と母島だね」という展開が生まれる。
おがさわら丸は、東京湾を出ると電波が届かないため、20時間のデジタル・デトックスができる。かくいう私も、このコラムを帰りのおがさわら丸の中で書いている。
島に上陸すると、ネット環境は整っている。宿はもちろんのこと、ビジターセンターや港などの公共施設ではフリーWi-Fiが飛んでいる。
一度も大陸とつながったことがないという世界でも稀な自然豊かな島。認定ガイドの制度がしっかりしており、自然展示の方法も優れており、環境保護の勉強になる世界自然遺産の島。そして、ドルフィンスイムやシュノーケリングの楽しい島。
小笠原だけでなく、伊豆諸島の島々を含む魅力いっぱいの東京宝島に、あなたも足をのばしてみてはいかがだろうか。
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
略歴

勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。