コンピュータソフトウェア著作権協会は、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(現・コンピュータソフトウェア協会)内でソフトウェア法的保護監視機構という名称で1985年に発足した。独立して名称を変えたのは90年9月で、今年で30年目に入った。
昭和から平成に変わる頃は、海賊版販売業者に加えてパッケージソフトの無許諾レンタル業者が全国各地で商売をしていて、この対策に奔走していた。顧客がコピーすることを前提にビジネスソフトやゲームソフトを貸し出す業者である。違法レンタルを許していては、1本のパッケージから無限にコピーされてしまい、ビジネスが根底から揺らぎかねない事態であった。
また、企業や自治体など組織内での違法コピーもひどい状況だった。米国のソフトウェア著作権者団体「BSA」の調査によると、日本の組織内違法コピー率は90%を超え、全世界の中で最低レベルにあった。
こうした状況を改善しようと努力したのは、われわれ当事者だけではない。例えば、この「週刊BCN」や、アスキーの「ログイン」などは何度も繰り返し、われわれの意見広告の掲載に協力してくれた。
あれから30年。違法レンタル業者は壊滅したし、組織内違法コピー率は世界で一二を争うほどまでに改善した。著作権に対する理解は格段に向上したが、この30年の最大の変化は、パッケージに入ったフロッピーディスクやCD/DVDといったメディアがなくなりつつあることだと思う。新聞や書籍さえも、紙というメディアがなくても流通できるようになった。
ソフトウェア開発に携わる人たちは、本当の価値がCDやDVDやUSBメモリといったメディアにあるのではなく、ソフトウェアそのものにあることを本能的に理解されているだろう。新聞や書籍、それに音楽や映画でさえメディアを持たず流通し始めた今の時代になって、パソコンソフトの違法レンタル業者と戦っていた30年前を思い返すとき、当時からデジタルで流通していたソフトウェア業界こそ、時代の最先端にあったのではないかと思う。
それでも著作権侵害はインターネット上で今も続いている。30年を機に、次の世代のために知恵を出して、さらに努力を続けたいと思いを新たにしている。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。