経済産業省の「IT導入補助金」は、この8月末で第二次公募を締め切り、ほぼ見込み通りの申請件数で着地した。昨年度は三次公募まで行ったにもかかわらず、当初見込んでいた申請件数に届かなかったのとは対照的。昨年度の反省を生かすかたちで、今年度は「中小企業の基幹系システムの刷新」に焦点を当てるとともに、1件当たりの補助額の幅を大きくして、使い勝手をよくしたことが見込み通りの申請件数につながった。(取材・文/安藤章司)
「IT導入補助金」の対象は、企業ホームページや財務会計など簡易な電子ツールをすでに導入している中小企業を想定しており、2019年度の「IT導入補助金」では、基幹系システムの導入や刷新に焦点を当てた。折しも経産省の「DX推進」で基幹系システムの刷新を促しているタイミングでもあり、「IT導入補助金」と方向性が一致したことも追い風となった。
18年度の「IT導入補助金」が補助の上限が50万円(補助率2分の1以内)と少額で、まとまった予算が必要な基幹系システムの刷新とのギャップが大きかった課題を踏まえ、19年度では最大450万円(補助率2分の1以内)まで補助する枠を設けた。最大450万円の補助を受けるには、販売管理や人事給与、財務会計、サプライチェーン、顧客管理といった基幹システムを中心とする10項目のなかから五つ以上選択することを求めた。また、補助額が最大150万円未満の少額コースも用意されており、こちらは二つ以上の選択と小規模な刷新にも対応している。
「IT導入補助金」は、中小企業と実際のIT導入を担うITベンダーなどが二人三脚となって実行する。18年度のように補助額が小さすぎるとIT導入の案件規模も小規模になりがちで、ITベンダーから見ると「魅力的ではない案件」になってしまう。19年度は、補助額を増やして“案件規模”を大きくすることでITベンダーにとっての魅力を高め、なおかつ中小企業にとって生産性を高める効果が大きく、DX推進の基盤となる基幹系システムの刷新を重点的に行えるメリットを増やした。
実際にどれほど生産性が高まったかを事務局に報告する導入後の報告期間については、最大450万円のコースでは向こう5年間だが、150万円未満のコースでは3年間に短くしている。報告内容も売上高と原価、従業員数、勤務時間の4項目のみで、「投入した資源に対して売り上げや粗利がどれだけ増えたかの生産性に焦点を当てる」(経済産業省の柴田寛文・商務・サービスグループ サービス政策課課長補佐)ことで、より分かりやすくした。
経済産業省
柴田 寛文
課長補佐
課題は、IT導入支援を担うITベンダーなどIT側と、中小企業経営に詳しい税理士や経営指導員、金融機関、自治体との連携が依然として不足している点。今後は「サービス等生産性向上応援隊」(仮)といった名称でITと経営の両面から、中小企業を総合的に支援する仕組みづくりに一段と力を入れていく。