2016年設立のArithmer（アリスマー）は、東京大学発のAIスタートアップです。同社が持つ現代数学を応用したAI技術は画像解析などに強みを発揮。国内外の大手企業で採用され、急速に事業を伸ばしています。東大大学院の特任教授も務める大田佳宏社長兼CEOにお話をうかがいました。


どんな会社なの

東京大学大学院数理科学研究科発のAIスタートアップです。

　Arithmerは東大発AIスタートアップとして「大学の研究成果を社会に還元する」ことを目的に、同大大学院数理科学研究科で特任教授を務める大田氏が2016年に設立。最新の数学を応用したAI技術を強みとして、AI-OCRや画像・動画解析、自然言語処理、スマートロボットなどの技術を開発・提供しています。
 
どんな事例があるの

画像採寸や文字読み取りなど、さまざまな分野で活用されています。

　紳士服のコナカとは、AIを活用した画像採寸技術アプリを開発。性別や身長・体重を入力し、普段着のまま写真を4枚撮るだけで自動でサイズを計測します。コナカではそのサイズを基にしたオーダーメイドのワイシャツやスーツの注文に対応。計測したサイズの誤差は「1センチ以下」だといい、サービスの開始から10カ月の間に商品が返品になったことはなく、「サイズの測り直しが1回あっただけ」なのだといいます。

　そのほかにも、三井住友海上火災保険と運転中の映像をスマートフォンで撮影し、危険運転に当たる部分をAIで抽出するサービスを開発。NECが提供する本人確認（KYC）サービスでは、ArithmerのAI-OCR技術が採用されています。特に金融・保険業界での実績が多く、OCRやチャットボット、データべース解析などに活用。また、日本だけでなく、海外からも引き合いが寄せられているそうです。

今後の方向性は

今はない、新しいことに対してAIを役立てていきたいと思っています。

　「新しい数学を使って今はないものをつくる」ことがモットー。そこが、Arithmerに多くの企業から引き合いが来る理由にもなっています。 　今後に向けては「社会にとってプラスになることにAIを使いたい」といい、例えば創薬や、災害への危機管理などで実際にAIを使った取り組みを、企業、自治体、大学の研究機関などとともに進めているそうです。