業務システムが古くなると保守性が悪くなり、IT予算を圧迫する大きな一因となる。全てを作り直すか、必要なところだけ切り出して残りは塩漬けにするか、といった解決の選択肢に加え古いシステムの内部を可視化して保守性を改善する手法もある。グロースエクスパートナーズグループのジーアールソリューションズ(鎌田悟社長)は、保守性の改善によって古いシステムの維持費の高騰を抑制し、寿命を延ばす提案でユーザーニーズに応えているSIerだ。
Company Data
会社名 ジーアールソリューションズ
所在地 東京都新宿区
設立 2012年
資本金 1000万円
事業概要 グロースエクスパートナーズのグループ会社。IT基盤の構築やモダナイゼーションを強みとする。グロースエクスパートナーズは、スクラッチ開発に強いGxP、ITコンサルティングのGraat(グラーツ)、ウェブ系の開発に強いグロース・インクなどを傘下に持つ。グループ全体の2019年8月期の売上高は24億円。
URL:https://www.gr-sol.co.jp/
プログラムの「保守性」に着目
保守性が悪くなる大きな原因として、開発を担当した人が異動になったり、定年退職したりしてプログラムの構造が分からなくなることが挙げられる。業務システムは業務プロセスの変化や、新しい規制に対応するため、随時、手が加えられる。規模の大きいユーザー企業の基幹業務系のシステムになれば、プログラムのステップ数や関連するサブシステムの量も多い。手直しによる影響範囲を調べるのに何週間、何カ月もかかることが少なくない。
左から白石康治取締役、鎌田 悟社長、杉 耕作執行役員
本来ならば、プログラムの設計図や改変箇所を記したドキュメント類が備わっているはずだが、「10年、20年と経過するうちに散逸してしまうケースが多い」(鎌田社長)という。徐々にプログラムの中身がブラックボックス化し、いわゆるシステムのレガシー化が進行していく。
レガシー化した業務システムの多くは、ユーザー企業が自社の業務に合わせて独自にスクラッチで作り込んだものや、カスタマイズを重ねたケース。プログラムの中身の問題であるため、ハードウェアを新しいものに置き換えたり、クラウド基盤へ移植しただけでは保守性は改善しない。ユーザー企業は、必要なところだけを切り出して段階的に作り直していくか、まったく新しいシステムに切り替えるといった選択を迫られる。
レガシーならではの利点もある
そこで、ジーアールソリューションズでは、ブラックボックス化したプログラムの可視化を提案している。例えば、IBM独自アーキテクチャーの旧AS/400(現Power Systems)に向けて、カナダのフレッシェ・ソリューションズが開発した可視化/解析ツールの「X-Analysis(エックスアナリシス)」シリーズを応用。独自言語のRPGやオフコン全盛期に人気のあったCOBOLで書かれたプログラムを解析し、業務処理の流れを可視化。保守にかかる工数を最大で6割削減できるという(画面イメージ参照)。
可視化/解析ツール「X-Analysis」でプログラムの相関関係を表示
レガシーシステムの課題は保守性が徐々に失われていくことだが、その点さえ解決できれば、安定稼働が期待できるレガシーを使い続けるメリットは大きい。基幹系システムを作り直すのもお金と時間がかかるし、失敗のリスクも伴う。むしろ、売り上げや利益に直結する顧客接点系のシステムに予算を重点的に割り振ったほうが、「経営的にプラスになると考えるユーザーがでてきても不思議ではない」(白石康治・取締役ソリューションデリバリー統括)と見る。
貴重なプログラム資産を継承
業務処理を中心とした基幹系システムの保守性を高めて、維持コストを削減するというジーアールソリューションズの提案は、ホームセンター大手のコメリグループが受け入れた。コメリグループでは、旧AS/400系のプラットフォーム上で稼働するプログラムの6割をCOBOL、4割をRPGで組む。ジーアールソリューションズが日本語化に協力して、国内販売を手掛ける「X-Analysis」を活用してプログラムを可視化。システムの保守性を担保しつつ、長年蓄積してきたプログラムの資産を継承していく道を選んだ。
折しも「2025年の崖」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進」のかけ声もあり、レガシーシステムを見直す機運が高まり、「ユーザー企業からのシステム刷新の問い合わせや引き合いが増えている」(杉耕作・執行役員ソリューションデリバリー統括)。ジーアールソリューションズでは、DX推進の妨げになりかねないレガシーシステムの保守性の課題を、低コストで、できる限り早く解決することで、顧客のニーズに応えている。