新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、このコラムを書いている2月20日の時点で、まだ感染拡大が続いている。

 いくつかの企業では原則在宅勤務とし、会社に出社せず自宅などで仕事をする対策を取っている。通勤ラッシュも感染の確率が高まるとして、時差通勤を指示している企業もある。また、3月末までの期間の大きなイベントはかなりの数のキャンセルが相次ぎ、その対応に追われている。

 いち早く1月26日に在宅勤務体制に移行したGMOインターネットグループでは、2011年から大地震、大災害、戦争、テロ、疾病の蔓延などの有事に備え、本社機能の地方移転や在宅勤務体制の構築など、いわゆるBCP(事業継続計画)を立て、年に1回の訓練も行ってきていた。

 1月25日に災害対策本部を立ち上げて同日通達。翌日から在宅勤務体制をとることができたのは、こうした普段からの準備が出来ていたからである。

 在宅勤務先からのデータのアクセス、セキュリティ、ビデオ会議、勤怠管理ができる制度は、一朝一夕でできるものではない。在宅勤務の指示が出た企業の中には、実際には自宅で仕事ができないため出社したり、正社員と派遣社員との就業規則の整理ができておらず混乱しているなどの状況が見られる。

 今回の疾病の蔓延というインシデントが収束しても、将来また新たなインシデントは発生しうる。その中でも事業を早期に復旧し継続するためには、計画だけでなく実践に向けた普段の訓練が重要であることが今回の事態で分かった。

 他方、オフラインでリアルに顔を合わせることの効用の研究も重要である。人と人のコミュニケーションにおいて、同じ空間にいればこそ伝わることもある。顔を合わせることの効用を理解したうえで、それを補う施策をとることにより、長期にわたる在宅勤務での事業継続が可能になる。

 在宅勤務期間の後に、組織全体で得られた教訓を出し合い、新たな制度にフィードバックすることでより強固なBCPを作り上げることができる。

 発生しないに越したことはないインシデントであるが、必ずまた前触れもなく突然に発生する。備えよ常に、事業継続計画の準備を怠りなく進めておこう。
 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。