視点

サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎

2020/12/11 09:00

週刊BCN 2020年12月07日vol.1853掲載

 総務省の自治体システム等標準化検討会が活発に議論を進めている。この研究会の中には、住民記録システム等標準化検討会と税務システム等標準化検討会の二つの部会があり、どちらも武蔵大学の庄司正彦教授が座長を務めておられる。

 自治体システムの標準化は、公のサービスとしての業務を全国的に標準化することで、大きく三つの効果が期待できる。

 一つは行政業務の標準化である。現在、自治体によって微妙に異なる同様の業務が標準化されることによってベストプラクティスの全国展開が可能になる。これまでもシステム開発費抑制の観点から複数自治体での行政業務システムの共同開発は行われていた。業務の棚卸しからスタートし、行政サービスとして本質的に提供すべきことは何なのかの見直しと、それに供する業務プロセスを設計するBPR(Business Process Re-engineering)が行われる。

 二つめは、他の行政サービスとの連携推進である。システム連携の基本となるデータベースの整理が進展し、API連携が進み、包括的な行政システムであるデジタル・ガバメントが形づくられる。また、官民連携で行政サービスの一部を民間へ委託する際にもデータ連携は重要になってくる。

 三つめは、システムの開発および運用コストの低減である。各自治体で行っていたシステム開発の設計、開発、運用の費用が低減される。他方、各自治体からの改善要望を受け標準化を検討するチームの立ち上げも必要である。JISやISOなど標準規格は、支える人々の多大なる努力によって保守されているおかげで継続し、多くの現場の拠り所として運用されている。業務標準も、作って終わりではなく日々改善のプロセスを回す組織が必要であり、人も費用も時間も投入しなくてはならない。

 2013年6月の閣議決定で「世界最先端IT国家創造宣言」が決定された。その基本理念には「閉塞を打破し、再生する日本へ」と「世界最高水準のIT利活用社会の実現に向けて」の二つが掲げられている。あれから7年が過ぎた。19年12月には、「デジタル・ガバメント実行計画」も閣議決定されている。

 なかなか進まない日本の行政サービスのデジタル化。今回は社会変容の一環として大きく前進することを期待している。
 
 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
  • 1