政府をはじめ経済界からも感染症対策の一環としてテレワークの導入が推進されている。私のまわりでは、一部の人だけが曜日を決めて出社するなどシフト制を採用する会社も増えてきた。もはやテレワークは事務系の業種を中心にCOVID-19収束後も定着しそうである。

 テレワークへ移行する中で、最初のうちは自宅でのネット環境やデータセキュリティといった仕事環境に関することが課題になっていた。それが長期化した今では、より本質的な課題にテーマは移行しつつある。つまり「私たちは、なぜこれまでテレワークをしてこなかったのか。阻んでいた理由は何なのか」ということである。

 kintoneやslackで社内データの共有やクラウド上でのコミュニケーションができるようになると、組織のメンバーが同じ建物のフロアにいることの「価値」が問い直されるようになった。私たちは、通勤費と通勤時間、通勤に費やす体力、そして事務所スペースの賃借料をコストとして支払っている。ベネフィットとしての「そこでワークすることの価値」はいくらになるのであろうか、という疑問がわいてくる。

 活動基準原価管理は、企業内での活動に関して同じ活動を違うやり方でやった場合のコストを計算し、よりコストの低いほうを採用する手法だ。例えば、注文書を封書で送った場合とFAXで送った場合と電子データで送った場合のコストを比較する。コストだけでなく、迅速性とデータの再利用性においても電子データの送付が有利だ。そのようにしてFAXを止めて、電子データに移行する。

 同じように、企業内での仕事をもう一度価値基準で見直してみた時に、どのような活動がどのような場で行われると最大の価値を生み出すのかを意識して、場の設計を考え直す動きが始まっている。言うなれば価値基準活動原価管理である。

 オフラインとオンラインの会議が生み出す価値の違いは何か、この差異を埋める工夫には何があるのか、どの種類の会議は集合したほうが良いのかなど、会議一つをとっても分析が必要だ。

 業務の成果評価や人事評価についても、評価材料をどのように整備すべきかは改めて考える必要がある。今年は、長引くテレワークに対応し、価値基準活動原価管理の元年となることを願っている。 
 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。