市場が成熟化して既存分野ではすでにビジネスモデルは出尽くした感があるが、まだ新しいモデルが湧き出ている分野がある。営業活動の生産性の向上もそうである。これまでは営業マンがカンやセンス、経験、気合、根性などで動かしてきた。これでは製品が市場に溢れると、どうしても営業の生産性は低くなる。

 トヨタが「工場の生産性は向上するのに、どうして営業活動の生産性は向上しないのか」と素朴な疑問を抱き、同社から依頼され発足した会社がエクスプローラーコンサルティング(東京都港区)である。この会社が急成長し、今やトヨタだけでなくBtoBでは金融機関や保険会社、BtoCでは自動車販売やハウスメーカーなど、どの業種でも大手企業どころを総なめにした感がある。

 この会社がどんな特殊なことをやっているのか。結論をいえば、営業活動の地味な作業をオーソライズして積み上げ、その上で各社の方針や営業マンで異なっていた営業行動・管理のモデルをつくりシステム化したのだ。例えば、地方銀行ならば各支店長、役席、営業マンを一堂に集め、営業プロセスの進捗、管理、案件に対するマネジメントを指導する。面談数、新規先の電話アポ、融資提案などで算定した一人当たりの基本営業活動量をもとに、銀行全体が平均的な営業活動を行えるようにする。すごいのは、依頼を受けたユーザーのどこもが大きな成果を上げていることだ。今まで会社の営業は何をしていたのか、と思えるほどの成果なのである。

 数年前にカンボジアで、同国初の菓子工場を取材したことがある。全国の店や卸しが工場の前にまさに門前市をなし、経費も輸送費もかからず現金でどんどん商品が売れていく。多くの日本企業もまだ、こうした体験が忘れられずにいる。ハウスメーカーはみんながマイホームを持ちたい、自動車ディーラーはみんながマイカーを持ちたい、という幻想を追いかけがち。だから、十分な営業活動をしないまま分譲マンションを建てると、新聞の全面広告やチラシの配布でなんとかさばけると思っている。

 エクスプローラーコンサルティングのビジネスモデルは、「世の中そんなに甘いものではおまへんのや」と投げ掛けたところに大きな価値がある。だから営業サービスでデミング賞まで取ったのである。 
 
アジアビジネス探索者 増田辰弘
増田 辰弘(ますだ たつひろ)
 1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。2001年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年、NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。