視点

Clubhouseは何が新しかったのか

2021/04/02 09:00

週刊BCN 2021年03月29日vol.1868掲載

 あれは今年1月中旬のこと。Facebook上で自らのアカウントが載った薄いベージュ色のスクリーンショットで盛り上がった。「Clubhouse 超楽しい!」「芸能人の〇〇さんが参加してきた!」「招待枠あと1名あります!」「招待お願いします!」という会話が飛び交った。

 私はアプリをインストールしてみたものの、承認の仕組みさえ分からず放置。最近のアプリの特徴か使い方の説明などヘルプは無い。ところが、いつの間にか同僚の先生からノミネートされ利用ができるようになっていた。

 メニューは、お知らせ、カレンダー、知人の活動、自分のプロフィールのみ。また利用できるのは2月末時点でAppleのiOSのみ。利用者から招待された人のみ参加できる。

 Drop-in audio chatという名の通り、音声版のソーシャルメディアだ。仕組みもかなりシンプルで、誰でもルームを開設できて、モデレーターはルームに人を呼び入れることができる。ルームに入った人がスピーカーとなり、それ以外の人はリスナーになる。

 Clubhouseの何が新しかったのか。私が思う一番の凄さは、使ってみたいと思わせる欲求のあおり方だ。あからさまに煽られると人は拒絶反応を示す。しかし、ClubhouseはOSの制限や限定された招待枠という方法で密かに好奇心を煽った。有名人が使いだしたのは、特にプロモーションをしたわけではないようだ。

 二番目はリリースのタイミングで、昨年4月にローンチして8月から一般公開。コロナ禍で人々の「誰かと話したい」という欲求は増殖していた。しかもマスクなしで。

 三番目は、ここだけの話の規則化。録音のNGや情報漏えいの禁止などへの同意を入会時に得ており、反した行為をすると退会させられる。

 四番目は電話番号に着目している点だ。登録時や誰かを招待するには電話番号帳へのアクセスをリクエストされる。個人特定のインデックスとして電話番号情報を集めて利用しているのであろう。

 Zoom一強と呼ばれていたオンライン会議に、Clubhouseという新星が現れ、そして今も次々と新しいアプリが登場している。デジタル空間での特性を生かし、そしてさらにワクワク度の高いコミュニケーションの場がこれからも出てくるであろう。まだしばらくはClubhouseから目、いや耳が離せない。
 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、総務省地域情報化アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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