国および自治体におけるDX推進の取り組み項目として、EBPM(Evidence-based policy making)が注目されている。EBPMは言葉の通りエビデンス(証拠)に基づいた政策決定で、データに基づいた政策の「決定」と「評価」を行うことだ。

 公共分野では教育や福祉、インフラ整備、そして今回のコロナ禍のような災害対応に向けて長期的な方針の中で単年度ごとの予算編成が行われ、政策が事業として組まれていく。私の専門であるプロジェクトマネジメントにおいても、費用便益分析では投下される資源であるヒト、モノ、カネ、情報が金額で換算されるので、その効果についても金額で換算して行われる。

 今年度、何をどれだけ実現するために、どのような政策を行い、結果としてどれだけの成果を得るのかは、事業申請を行う上での基本のようにも見えるが、実はそう簡単ではない。多くの予算がこれまでの延長線上にあり、途中で止めることができない。対昨年度で何%アップまたはダウンという文脈の中で討議されることも多い。さらに時々の政局において「政治的な判断」というものが加わるので一筋縄ではいかない。

 例えば、コロナ禍で感染症対策の一環として売り上げの減少した観光産業への支援策に、国はGoToトラベルという施策を実施した。各都道府県でも同様に観光需要の喚起策が展開された。観光産業がダメージを受けているのは明らかで、そこに対して支援を行うことが必要であることは、国民の理解も得られるであろう。

 では、どれくらいの売り上げの減少があり、どのような喚起策をどれくらいの期間、どの程度の規模でどうやって展開すれば、どれくらいの効果があるのか。算出は容易ではない。直接的な宿泊費やお土産代の補填のほかに経済波及効果についても換算しなくてはならない。面倒ではあるが限られた税収からの支出なので、国民と共通理解のもとで政策が行われるという点でメリットが大きい。

 事態の認識を言語化し、政策と効果を結びつける客観的に説明のできるロジックモデルを組み立て、実際の効果検証を同じロジックモデルで行う。こうした一連の作業が行政の作法として根付くまでには、まだ時間がかかりそうだ。 

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。NPO法人離島経済新聞社理事、鹿児島県奄美市産業創出プロデューサー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。