視点

注目が集まる「メタバース」と「NFT」

2022/01/19 09:00

週刊BCN 2022年01月17日vol.1907掲載

 メタバース(3DCGの仮想空間)の盛り上がりとともに、よく聞くようになったNFT(非代替性トークン)。メタバースとNFTが一緒に扱われる理由を、いま一つピンとこない方も多いだろう。なぜブロックチェーン技術とNFTを活用したメタバースに高い注目が集まっているのか。

 ブロックチェーン技術ベースのメタバースの例としては「The Sandbox」や「Decentraland」があるが、これらの仮想空間においては土地や制作した3Dアイテムが売買でき、それらにはNFTが付随している。NFTとはブロックチェーン技術を活用してつくられる唯一性を持つデジタルデータのことで、従来のデジタルデータと異なり、発行者や所有者、発行時期などの記録が台帳上で分かるようになっている。

 これによって、これまでコピーされてしまうデジタルデータの価値が担保されることになった。NFTとメタバースがつくる新しい価値創造は近い将来、数兆ドル規模の巨大産業となる可能性があると見られており、さまざまな企業がすでに参入を始めているのだ。例えば、ナイキやグッチなどファッション関連の大手ブランドが、すでにアバター向けファッションアイテムを販売している。

 当社が展開する「STYLY」は、年末にリアルメタバース構想を発表した。これは都市の3Dデータをクラウド上に再現し、仮想空間上で制作したものが実際の場所ではARで見ることができる都市データとの連動プラットフォームである。STYLYもNFT対応を春に控えている。これによって仮想空間でのみ展示・売買されているNFTアートが、リアルな場所に連動して展示・売買できるようになる。つまり街中にNFTアートが自由に設置され、それを自由に売買できるようになる。

 レコードが音楽の唯一の流通手段だったとき、いつでもどこでも音楽をダウンロードして聴けるなんて誰も想像しなかったであろう。いま、リアルメタバースについてはその価値を想像するのは難しい。しかし過去の大きなイノベーションは多くの期待と批判からはじまり、そしてそれをブレイクして定着してきた。きっとメタバースとNFTも同じように有効な価値を生む場所を得て発展していくことになる。残念ながら日本はこの分野への投資が積極的ではない。Metaがメタバースへ投資する年間投資額の1%程度だ。

 海外勢に先を越された感はあるが、コンテンツを武器にした勝ち筋はまだ残っている。すぐに動き出すべきだ。

 
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。
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