視点

DX推進計画におけるビジョンの重要性

2022/02/23 09:00

週刊BCN 2022年02月21日vol.1911掲載

 昨年12月25日に総務省から「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」が公表された。これは、11月に武蔵大学の庄司昌彦教授を座長とする「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」で議論された成果物だ。

 検討会では、各地方自治体が情報システムの標準化、行政手続のオンライン化などについて計画的に取り組む方策を検討する際の指針となるようにと、同計画を作り上げたとのことである。

 それに呼応するように各地方自治体からDX推進計画が公表されている。

 福岡県北九州市は今年1月12日に「北九州市DX推進計画」を発表した。北九州市はデジタル技術の徹底活用により、行政サービスや市役所業務を抜本的に見直す市役所のDXを推進し、誰もが安心して必要とする行政サービスを利用できる「デジタルで快適・便利な幸せなまち」の実現を目指すとしている。

 計画にはゴールが重要であることは言うまでもないが、未知のものに挑む計画というものは着地点が見えにくい。というか、着地点は定まっていないものがほとんどだ。実行しながら着地点を考える。「新しい〇〇」や「○○田園都市構想」というのも、未知のものに挑む計画なので具体的に何なのかは誰にも分からない。

 そうした時に必要になるのはビジョンだ。どちらの方向に向かうのかをビジョンとして明らかにしないと計画が立てられない。北九州市の場合は「デジタルで快適・便利な幸せなまち」の実現の方向に進む。別の例として愛知県安城市の場合は「誰もが便利で生活の豊かさを実感できるデジタル市役所」を実現するとのビジョンを掲げている。

 筆者がDX推進アドバイザーを務める鹿児島県においても、現在まさに最終的な計画立案の詰めの作業が行われている。筆者からは冒頭に知事からのビジョン・メッセージをお願いしている。各自治体がそれぞれのビジョンに基づき特色ある地域づくりの下支えになるDXを実現することが、すなわちDX推進計画の価値となるのだ。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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