「Web3」という言葉が賑わいをみせている。この概念をみなさんは理解しているのだろうか。10年ほど前にWeb2.0という言葉が登場した。これは発信者が一方的に情報を提供するWeb1.0から、ソーシャルメディアが力を持つ時代に変化する節目となった。当時はピンとこなかったかもしれないが、今ではマスコミのニュースサイトよりも、TwitterやInstagramから情報を得るほうが多くなってきている。

 若者はテレビよりYouTubeを見ている時間が多いという。ではWeb3はその延長線なのだろうか。最近、Web3.0よりもWeb3と表現する人が目につくが、Web3はWeb2.0の発展系としてのWeb3.0とは違うと、気づいている人はまだまだ少ないのではないか。

 簡単にいえば、技術の発展として2.0から3.0になったのではなく、Web2は中央集権的な時代、Web3は非中央集権的な時代へと変化することであり、技術の発展によって社会が変わるのではなく、社会変化を支える技術がブロックチェーンであると考えたほうが分かりやすい。

 この背景には価値観の変化がある。これを理解しないとWeb3時代に求められる顧客価値が何かを大きく取り違えてしまうことになる。中央集権的な社会はピラミッドをつくり、そこに優劣を単一的な指標で評価した。みんなが良いことが一番良い。この思想は成長を目的とする社会にとって、とてもパワフルな組織運営を可能とした。

 しかし、その中で資本主義の過熱、その影響としての自然破壊、コミュニティーの崩壊などが起きた。これら多様な価値観を認める社会に変化させ、それをコミュニティー化するために必要なのがWeb3で実現される分散技術だ。同じ価値観をもったコミュニティーを組成し、小さいコミュニティーで小さい活動を頻繁に行うことができ、セキュリティが担保される。まさにブロックチェーンがなせる技である。

 Web3が技術的変化だけではなく、社会構造の変革を目的として使われる技術となるのかは分からない。しかし、SDGsをはじめとして資本主義社会への疑問と危機感は着実に人々の意識に根付いてきている。

 技術は人々が目指す世界を実現するための単なるツールである。社会がどこに向かおうとしているのか、そのための技術であることがサービスに必要な根本であることを忘れてはならない。

 
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。